不動産登記法第2条における「登記権利者」と「登記義務者」についての説明は、不動産登記手続きの際の当事者の位置づけを明確にするものです。
定義
- 登記権利者(第2条第十二号)
権利に関する登記をすることで「登記上、直接に利益を受ける者」を指します。
例えば、不動産の売買においては、所有権を取得する買主が登記権利者にあたります。
ただし、間接的な利益を受ける者、例えば、夫名義の新居に住む妻などは、直接の権利が登記上に現れないため、登記権利者とはなりません。
- 登記義務者(第2条第十三号)
権利に関する登記をすることで「登記上、直接に不利益を受ける者」を指します。
例えば、不動産の売買における売主や、抵当権設定の際の不動産所有者(抵当権設定者)が登記義務者にあたります。
こちらも、登記簿上で直接の不利益が発生しない者は、登記義務者とはなりません。
具体例
- 不動産売買のケース
買主(登記権利者):
所有権移転により、新たに不動産の所有権を取得するため、登記上の利益を受けます。
売主(登記義務者):
所有権移転により、自身の名義が抹消され、不利益を受けるため、登記義務者にあたります。
- 抵当権設定のケース
抵当権者(登記権利者):
抵当権の設定により、不動産に対して抵当権という権利を得るため、直接の利益を受けます。
所有者(登記義務者):
抵当権設定により、自身の不動産が担保に供されるため、直接の不利益を受けます。
共同申請の原則と例外
不動産登記は、原則として登記権利者と登記義務者が共同で行う「共同申請」が求められます。
これは、司法書士が双方から委任状を受け取り、両者を代理して登記申請を行います。
ただし、民法では通常「双方代理」は禁止されていますが、この登記においては例外的に許されています。
共同申請の例外(単独申請)
- 判決による登記:
登記義務者の協力が得られない場合、判決に基づいて登記権利者が単独で登記を申請できます。
- 相続または合併による登記:
戸籍謄本や登記簿謄本などの公文書により権利の真正が担保される場合、登記義務者の協力がなくても、単独での申請が可能です。
その他の単独申請例
- 所有権保存登記:
新築物件などにおいて、初めて所有権を登記する場合。
- 登記名義人の表示変更・更生登記:
名義人の氏名変更や、誤記の訂正など。
- 抹消登記:
登記された権利を消去する場合(抵当権の抹消など)。
- 仮登記:
本登記ができるまでの準備的な登記。
これらの規定により、登記手続きにおける当事者の役割と責任が明確になり、法的な混乱を避けることができます。
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