民法における「心裡留保」「通謀虚偽表示」「錯誤」「詐欺」「強迫」の各制度について、当事者間の効果や第三者との関係についての要点です。
「基本的な法律効果」
- 心裡留保、通謀虚偽表示、錯誤:「無効」
- 詐欺、強迫:「取り消し」
1. 心裡留保(民法93条)
- 概念:
意思表示者が真意でない意思表示をすること(いわゆる「冗談」など)。
- 当事者間の効果:
相手方が真意でないことを知っている、または知り得たときは無効。
- 第三者との関係:
善意無過失の第三者に対しては、心裡留保の無効を主張できない。
善意だが過失がある第三者に対しては、無効を主張できる。
2. 通謀虚偽表示(民法94条)
- 概念:
当事者が通謀して虚偽の意思表示をすること(仮装売買など)。
- 当事者間の効果:
無効。
- 第三者との関係:
善意の第三者に対しては無効を主張できない。
過失があっても善意なら保護される(無過失までは要求されない)。
3. 錯誤(民法95条)
- 概念:
意思表示が事実と異なり、その錯誤が法律行為の重要部分に関する場合。
- 当事者間の効果:
無効(ただし、重大な過失がある場合は無効主張不可)。
- 第三者との関係:
善意の第三者に対しても錯誤無効を主張できる(例外なく無効を主張可能)。
4. 詐欺(民法96条)
- 概念:
他人を欺いて意思表示をさせること。
- 当事者間の効果:
取り消し可能(詐欺による意思表示は一応有効)。
- 第三者との関係:
善意の第三者に対しては取り消しを主張できない。
悪意の第三者(詐欺の事実を知っていた者)に対しては取り消しを主張できる。
5. 強迫(民法96条)
- 概念:
他人に対して恐怖を感じさせて意思表示をさせること。
- 当事者間の効果:
取り消し可能(強迫による意思表示は一応有効)。
- 第三者との関係:
善意の第三者に対しても取り消しを主張できる(強迫の被害者保護のため)。
覚えやすいポイントまとめ
「無効か取消しか:」
- 無効:心裡留保、通謀虚偽表示、錯誤。
- 取消し:詐欺、強迫。
「第三者への主張可否:」
- 心裡留保:善意無過失の第三者に対抗不可。
- 通謀虚偽表示:善意(過失あっても可)の第三者に対抗不可。
- 錯誤:善意の第三者にも対抗可能。
- 詐欺:善意の第三者に対抗不可。
- 強迫:善意の第三者にも対抗可能。
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