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通謀虚偽表示と94条2項の「第三者」について

 【民法】通謀虚偽表示と94条2項の「第三者」について

 

1. 通謀虚偽表示の定義

 通謀虚偽表示とは、2人以上の者が相手方と通じて虚偽の意思表示を行うこと。

 当事者間では「無効」であり、取り消しではない。

 

2. 民法94条2項の規定

 民法94条2項は、「通謀虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗できない」と規定している。

 ここでの「善意の第三者」が誰であるかを判断することがよく問われる。

 

3. 善意の第三者の定義

 第三者とは、当事者および包括承継人(例:相続人)以外の者を指す。

 善意の第三者には、無過失まで要求されず、過失があっても保護される(善意であればOK)。

 

4. 善意の第三者に該当する例

  • 虚偽表示の目的物の善意の差押債権者
  • 不動産の仮装譲受人からの善意の譲受人
  • 善意の譲受人からの転得者(転得者が悪意でも保護される)
  • 仮装譲受人の不動産に抵当権を設定した善意の抵当権者

5. 善意の第三者に該当しない例

  • 仮装譲受人の一般債権者
  • 仮装譲受人から取り立てのために債権を譲り受けた者
  • 仮装で抵当権が放棄され、順位が上昇したと誤信した後順位の抵当権者
  • 土地を借りている者(賃借人)
  • 仮装譲受人が建物を建てて賃貸した場合の建物賃借人

6. 善意の第三者の保護要件

  • 善意であれば保護され、登記は不要。
  • 虚偽の外観を信頼して取引に入ったことが保護の根拠。

7. 民法94条2項の類推適用

  • 意図的に虚偽の外観を作らずとも、虚偽の外観作出に関与したり、放置した場合、民法94条2項と110条を類推適用し、善意無過失の第三者に対して実体の不存在を主張できない。

 この場合、第三者には「無過失」が求められることに注意。

 

まとめ

 通謀虚偽表示は無効であり、取り消しではない。