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代理行為における瑕疵の判断基準

 【民法101条1項・2項と代理行為の瑕疵についての解説】

 

1. 民法101条1項:代理行為における瑕疵の判断基準

  • 条文内容:

 意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫、またはある事実を知っていたこと・知らなかったこと(過失の有無)によって影響を受けるべき場合、その事実の有無は「代理人」について判断する。

  • 具体例:

 依頼者(本人)が代理人に不動産購入を依頼。

 代理人が購入した不動産に隠れた瑕疵(通常の注意では発見できない欠陥)があった場合、代理人がその瑕疵について「善意無過失」であれば、売主に対して瑕疵担保責任を追求できる。

  • 要点:

 代理人が瑕疵について「善意無過失」であれば、本人がその瑕疵を知っていた場合でも、瑕疵担保責任を追及できる。

 つまり、意思表示の効力は代理人の知識・過失を基準に判断するということです。

 

2. 民法101条2項:特定の法律行為を委託された場合の例外

  • 条文内容:

 特定の法律行為をすることを委託された場合、代理人が本人の指示に従ってその行為をしたとき、本人は自分が知っていた事情について「代理人が知らなかった」と主張できない。

 本人が過失によって知らなかった事情についても同様に主張できない。

  • 具体例:

 依頼者(本人)が特定の物件(目当ての物件)があり、その物件の購入手続きを代理人に依頼した場合。

 依頼者がその物件に瑕疵があることを知っていた場合、代理人がそれを知らなかったとしても、本人は「代理人が知らなかった」として瑕疵担保責任を追及することはできない。

  • 要点:

 本人が「特定の法律行為」を代理人に委託した場合は、本人自身の知識・過失が基準となり、代理人の無過失を理由に責任を逃れることはできない。

 

3. 1項と2項の違い

  • 1項(大まかな委任の場合):

 「仙台の駅から徒歩10分以内で○○円以内でよさそうなマンションを買ってきて」というように、詳細が決まっていない場合。

 

 代理人の知識や過失が判断基準となり、代理人が善意無過失であれば、瑕疵担保責任を追及できる。

  • 2項(特定の委任の場合):

 本人のお目当ての物件が決まっていて、その物件の購入手続きを代理人に依頼した場合。

 本人が知っていた事情を代理人が知らなかった場合でも、本人がその責任を逃れることはできない。

 

4. 代理に関する詐欺・強迫の影響

  • 代理人が詐欺・強迫をした場合:

 本人(依頼者)が善意であっても、相手方は意思表示を取り消すことができる。

  • 本人が詐欺をした場合:

 代理人が善意(詐欺を知らない)であっても、相手方は意思表示を取り消すことができる。

 詐欺師が「詐欺だと知らない代理人」を利用して取引を行っても、相手方は詐欺を理由に契約を取り消すことができる。