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時効の援用と放棄

 時効に関する民法の規定について、特に援用や放棄、そして援用できる者について整理してみます。

 

「時効の援用と放棄」

時効の援用(民法145条)

  • 定義: 時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がそれに基づいて判断することはできません。
  • 意味: 裁判所は、当事者が時効を主張しない限り、自発的に時効が成立していると判断することができません。つまり、当事者の主張が重要です。

時効の放棄(民法146条)

  • 定義:

 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

  • 意味:

 事前に時効を放棄する契約があっても、その条項は無効です。

 ただし、時効が完成した後は、その利益を放棄することは可能です。

  • エンドレスな繰り返し:

 時効を放棄した後に、再度時効の期間が経過すると、再び時効が完成することができます。

 このプロセスを繰り返すことができますが、事前に放棄することはできません。

 

  • 時効を援用できる者

 判例に基づく「当事者」の定義について理解しておく必要があります。

 援用できる者は、時効により直接の利益を受ける者に限られます。

  • 援用できる者
  1. 保証人
  2. 物上保証人
  3. 抵当不動産の第三取得者
  4. 売買予約の仮登記に後れる抵当権者
  5. 売買予約の仮登記に後れる不動産の第三取得者
  6. 詐害行為の受益者
  • 援用できない者
  1. 後順位抵当権者: 先順位の抵当権の被担保債権に対して。
  2. 建物の賃借人: 賃貸人の土地の取得時効について。

注意点

  • 実際の契約:

 借り手が立場的に弱い場合、契約書に不利な条項が含まれることがありますが、民法は時効の利益をあらかじめ放棄できないとすることで、借り手を保護しています。

  • 判例の理解:

 時効の援用に関する判例を把握しておくことで、試験対策や実務上の理解が深まります。

 このように、時効に関する法律の理解は、実際の契約や権利の行使において非常に重要です。