民法第177条における「第三者」とは、不動産に関する物権の得喪や変更について、登記が行われていないこと(登記の欠缺)を主張する正当な利益を有する者を指します。
この第三者が、登記がないことを根拠に、権利を主張することができます。
具体的には、以下のような場合があります。
1. 民法177条の「第三者」にあたる例
(1)二重譲受人
一つの不動産について、複数の者に譲渡された場合の譲受人のうち、登記を受けていない者。
例えば、AがBとCの両方に同じ不動産を売却し、Bが先に登記を済ませた場合、Cは第三者としてBの登記に対抗できない。
(2)差押債権者
債務者の不動産に対して差押えを行った債権者は、その差押え時点での登記状況に基づき権利を主張することができる。
(3)抵当権、地上権等の制限物権を取得した者
不動産に抵当権や地上権といった物権を取得した者は、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する。
(4)不動産賃借人
賃貸借契約に基づき不動産を使用・収益している賃借人も、登記の欠缺を主張できる場合がある。
(5)共有持分譲渡による他の共有者
共有者が他の共有者に対して持分を譲渡した場合、その持分の譲渡が適切に登記されていなければ、他の共有者は第三者としてその登記の欠缺を主張できる。
(6)被相続人から贈与を受けた者
相続が発生する前に被相続人から不動産を贈与されたが、登記を済ませていない者は第三者として扱われる。
(7)共有持分権放棄による他の共有者の持分取得者
共有者が持分を放棄し、他の共有者がその持分を取得する場合、その取得が登記されていなければ第三者とみなされる。
2. 民法177条の「第三者」にあたらない例
(1)無権利者及びその譲受人、転得者
契約が無効であり、権利を有しない者やその譲受人・転得者は、正当な利益を持たないため、第三者にあたりません。
(2)不法行為者、不法占拠者
不法行為や不法占拠によって不動産を使用している者は、登記の欠缺を主張する正当な利益を持たない。
(3)背信的悪意者
登記がなされていないことを知りながら、それを利用して権利を主張しようとする者。
例えば、登記を欠いていることを知りつつ権利を取得しようとする場合、その者は第三者にあたりません。
(4)所有権が転々移転し、前主・後主の関係にある者
不動産の所有権が複数回移転した場合の前の所有者と後の所有者の関係において、前の所有者は第三者にあたりません。
(5)受寄者
贈与を受けたものの登記を行わない受贈者も、第三者には該当しません。
(6)仮装売買の買主
実態のない虚偽の売買に基づく買主は、第三者としての主張ができません。
(7)通行地役権の承役地譲受人
地役権に基づく通行権などを持つ土地の譲受人も、登記の欠缺を主張できません。
(8)法定地上権取得者と敷地買受人
建物と土地の所有者が異なり、法定地上権を有する者やその敷地を購入した者も、第三者とはみなされません。
(9)不動産登記法5条に列挙されている者
詐欺や強迫で登記を妨げた者や、他人のために登記を行う義務を負う者も、第三者として登記の欠缺を主張することはできません。
3. 不動産登記法第5条の規定
詐欺または強迫によって登記を妨げた者は、その登記の欠缺を主張できない。
他人のために登記を申請する義務を負う第三者も、登記の欠缺を主張できません。
これらの例からもわかるように、「第三者」として対抗要件を主張するためには、正当な利益があることが求められます。
不動産の権利関係は非常に複雑ですので、具体的なケースでは専門家のアドバイスを受けることが大切です。
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