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地すべり防止区域とは?不動産取引に必要な基礎知識

 地すべり防止区域とは?不動産取引に必要な基礎知識

 

 地すべり防止区域とは、「地すべり等防止法」に基づき、地すべりによる被害を防ぐために国(国土交通大臣または農林水産大臣)が指定する区域のことです。

 斜面の一部または全部が重力や地下水の影響で滑る「地すべり」は、土砂災害の一種であり、一度発生すると制御が極めて困難で、甚大な被害をもたらします。

 日本は地形的に山が多く、梅雨や台風による豪雨が頻発するため、全国各地に地すべりの危険性がある地域が点在しています。

 このため、地すべりがすでに起きた場所や、その可能性が極めて高い地域のうち、公共の利害に大きく関わる場所が「地すべり防止区域」に指定され、排水施設や擁壁の設置といった対策が講じられるとともに、特定の行為が制限されます。

 

 この区域内で行われる次のような行為には、都道府県知事の許可が必要です

1.   地下水の増加や排水の阻害につながる行為

2.   地表水の停滞や浸透を促進する行為

3.   切土・盛土や法面工事

4.   建物や工作物の新築・改築など、地すべりを誘発・助長する恐れのある行為

 つまり、住宅やマンションの建設も原則として許可が必要であり、開発に一定の制約が伴うため、計画段階での十分な調査が重要です。

 

 地すべり防止区域は、主務大臣によって指定されますが、その管理は都道府県知事が行うため、許可申請や確認の窓口は都道府県庁になります。

 所管省庁によって管轄部署が異なり、農林水産大臣が所管する区域であれば農政部門、国土交通大臣であれば土木部門が担当窓口となります。

 

 不動産取引においては、宅建業者は対象物件が地すべり防止区域にある場合、「重要事項説明書」に明記し、買主等に説明しなければなりません(宅建業法第35条)。

 現地には区域表示の標識が設置されているほか、都道府県の担当窓口で住宅地図や位置図により区域の確認が可能です。

 

 なお、「地すべり危険箇所」と混同されがちですが、こちらはあくまで発生の可能性がある地点を示すものであり、法的規制はありません。

 一方、地すべり防止区域は法に基づき、行為制限や施設整備を伴う区域です。

 

 また、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)や特別警戒区域(レッドゾーン)とも異なり、地すべりの発生源に対するハード対策に重点を置いたものです。

 

 最後に、不動産価格への影響についてですが、地すべり防止区域に指定された土地は、開発制限や売買リスクがあるため、相対的に資産価値が下がる傾向があります。

 

 また、国の進める「コンパクトシティ政策」により、地すべり防止区域は「居住誘導区域」に含まれない扱いとなるため、今後も資産価値の維持は困難となることが予想されます。