· 

絶対高さ制限とは?―10m・12mに制限

 絶対高さ制限とは?―10m・12mに制限される理由と実務上の注意点

 

 「絶対高さ制限」とは、建物の高さを10mまたは12mまでに制限する都市計画上のルールで、第1種・第2種低層住居専用地域、田園住居地域などに適用されます。

 この制度は、低層住宅地における落ち着いた住環境や良好な街並みを守ることを目的としています。

 建築基準法第55条では、これらの地域において「都市計画で定められた高さの限度(10mまたは12m)を超えてはならない」と明記されており、例えば第1種低層住居専用地域では10m、高めの制限が認められる第2種低層住居専用地域や田園住居地域では12mとしている市町村が多く見られます。

 なぜ10mや12mなのかというと、おおむね2~3階建ての戸建住宅が主となる地域に、高層建築が建ってしまうと日照や景観が大きく損なわれるためです。

 

 絶対高さ制限があることで、近隣の住宅に過度な影響を与えるような建物の建設を防ぎ、地域全体の住み心地を守ることができるのです。

 ただし、すべての建物に一律に適用されるわけではなく、特定行政庁の許可によって例外的に高さ制限が緩和される場合もあります。

 たとえば次のようなケースです:

1.   敷地面積が広く、周囲に十分な空地を有している場合

2.   建物の用途が学校や公共施設などで、やむを得ないと認められる場合

3.   周辺が公園や広場、広い道路などに囲まれており、良好な住環境を害さないと判断される場合

 これらの条件を満たした建物については、地域が10m制限であっても最大12mまでの高さが認められることがあります。

 

 注意点として、不動産調査や設計を行う際には、対象地が絶対高さ制限の対象となるかどうかを正確に確認する必要があります。

 具体的には「〇〇市 用途地域」または「〇〇市 絶対高さ制限」で検索し、都市計画図や市区町村の都市計画課のページで確認できます。

 

 また、絶対高さ制限と混同しやすい制度に「最高高さ制限」がありますが、これは高度地区における日照・風通しの確保を目的とした制度で、10m・12mといった固定値ではなく、地域によって高さの上限が異なります。

 たとえば、市街地では隣地との距離や道路幅などに応じて計算された「斜線制限(北側斜線・道路斜線)」や「日影規制」とあわせて、最高高さが20mや25mに設定されていることもあります。

 一方、絶対高さ制限では、このような緩和や計算式による調整は認められず、「高さ10m超えは禁止」と明確に制限されている点が大きな違いです。

 

 実際、戸建て住宅の建築や中古住宅の再建築、マンション開発を検討する際に、この絶対高さ制限を知らずに計画を立ててしまうと、建築確認が下りなかったり、計画変更を余儀なくされる可能性があります。

 不動産取引においても、絶対高さ制限の有無は「重要事項説明書」に記載し、買主に対して適切な説明を行う義務があります。

 

 最後に、不動産の資産価値にも影響が出ることを意識しておきましょう。

 高さ制限がある地域は、一般に住環境の良さが評価されて人気が高い反面、将来的に高層開発などの用途転換が難しいため、投資目的の不動産とは一線を画す性格を持っています。