「家族信託とは 親に代わって子が財産管理すること」
1-1. 家族信託は民事信託の一種
l 認知症による財産管理問題に対応するため、近年注目。
l 商事信託(信託銀行等)に対して、民事信託は親族など個人が管理を担う。
l 民事信託の一形態として「家族信託」がある。
1-2. 家族信託は新たな財産管理の手法
l 「名義」を子どもに変更しつつ、親が「財産権」を保持。
l 不動産の登記名義や預貯金の口座名義を子にすることで、子どもがスムーズに財産管理・処分可能。
l 親の認知症が進行しても、子どもが代わりに対応できる強みがある。
1-3. 家族信託のメリットとデメリット
◆メリット
l 贈与税・不動産取得税が発生しない。
l 自宅売却時の「マイホーム特例」や相続時の「小規模宅地特例」などの税優遇が受けられる。
l 信託契約を解除し財産を手元に戻すことも可能。
l 次の承継者だけでなく、次々の承継先も設定できる。
l 税負担を軽減しつつ、柔軟な資産管理と承継が可能。
◆デメリット
l 制度としてルールや実務が未整備な部分が多い。
l 全分野(信託法、民法、税務等)に精通する専門家が少ない。
l 家族信託だけでは代替できないケースがある(例:施設入居契約などの代理権は持てない)。
l 信託契約書の作り込みが重要で、内容次第でリスクが生じる。
【家族信託に不動産を含む場合のポイント】
l 不動産信託には登記が必要
l 自宅や収益不動産を信託する際には、名義変更登記が必須。
l 登記名義人の意思確認ができないと取引が進まず、認知症対策には登記が重要。
l 名義を子どもに変えることで、売却や手続きがスムーズに進む。
家族信託の登記に必要な書類と費用
l 必要書類:登記識別情報または登記済証、父子の実印、父の印鑑証明書、子の住民票など。
l 費用は不動産の評価額により変動。事前に専門家に見積もり依頼を推奨。
家族信託と税金(登録免許税・相続税)
l 登記変更時には登録免許税が発生。
l 父親が死亡し財産権が承継される際には相続税が課される。
【生前贈与と家族信託の違い】
l 生前贈与はすべての権利が移転する
l 管理・処分権限を含む財産権が贈与先に完全移転。
l 贈与税や不動産取得税がかかり、登記時の登録免許税も贈与扱いで高率(2%)となる。
l 生前贈与には双方の合意が必要
l 法律上は口頭でも成立するが、トラブル防止のため贈与契約書の作成が望ましい。
l 生前贈与は即時の資産移転に有効
l すぐに渡したい相手がいる場合に便利。
l 教育資金の一括贈与など、非課税制度も利用できる(1500万円まで非課税)。
【家族信託を検討すべきケース】
財産を渡したい相手が決まっている場合
家族信託なら税制優遇を受けながら名義変更と管理を託せる。
例:実家を子どもに信託し、必要に応じて売却し現金化できる仕組みを用意。
成年後見制度の代替として
l 父親が認知症悪化後も、家族信託なら子どもが売却や管理を可能にできる。
l マイホーム特例も活用でき、手元資金を有利に残せる場合がある。
このように、
l 家族信託は「名義を変えつつ財産権を保持できる」柔軟な仕組み
l 生前贈与は「すべての権利が即時移転する」シンプルな仕組みといった違いがあり、目的や状況に応じた選択が重要です。
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