道路斜線制限とは?
家づくりに欠かせない高さ制限の基本
「道路斜線制限」とは、建物を建てる際に道路に面する側の高さを制限する法律上のルールです。
目的は、道路とその周辺の採光や通風、日照の確保にあります。
マンションや戸建住宅の上部が斜めに切り取られたような形状になっているのを見たことがあるかもしれませんが、これはこの道路斜線制限を守って設計されているからです。
■ 斜線制限とは?
「斜線制限」は、空間の圧迫感や日陰の影響を抑えるために、建物の上部を斜めに制限する仕組みです。斜線制限には以下の3種類があります:
1. 道路斜線制限
2. 隣地斜線制限
3. 北側斜線制限
このうち道路斜線制限は、建物が接する道路の幅員をもとに、建物の高さに制限を加えるもので、用途地域ごとに基準が異なります。
どういう仕組み?
具体的には、道路の反対側の境界線から一定の距離を取って、そこから1.25または1.5の勾配で引かれた「見えない斜めの線(架空線)」を超えて建ててはいけないというものです。
たとえば、道路幅が6mで傾斜勾配が1.25なら、建物の高さは最大7.5m(6m×1.25)までとなります。
この傾斜勾配と適用距離(どこまでこの制限を及ぼすかの奥行き)は、地域の用途地域や容積率によって細かく設定されています。
用途地域 |
容積率 |
適用距離 |
傾斜勾配 |
第1・第2種低層住居地域など |
~200% |
20m |
1.25 |
商業地域 |
~400% |
20m |
1.5 |
準工業・工業地域 |
~200% |
20m |
1.5 |
容積率が高くなると、適用距離も伸びていきます(最大50m程度)。
■ セットバックで有利になる?
敷地が道路から後退(セットバック)して建物を建てる場合、道路の反対側の境界線も後ろにずらして考えられるため、斜線の起点が遠ざかり、その分高く建てられるようになります。
これを利用して、建物の形状や配置に工夫を加える設計が多く見られます。
■ すべての地域にかかるの?
道路斜線制限は、市街化区域のほぼすべての用途地域で適用されます。
具体的には、低層・中高層住居地域、商業地域、工業地域などすべてに適用され、例外はほぼありません。
ただし、高度地区や特別用途地区などで別の高さ制限(例:最高高さ制限)が設定されている場合は、そちらとの調整が必要です。
■ 注意点と設計への影響
道路斜線制限を知らずに設計を進めると、「こんなはずじゃなかった!」となることもあります。
特に狭小地では、斜線制限によって3階建てにできない、屋根形状を大きく変えなければならないなどの制約が出てきます。
設計士や建築士は、プランニングの初期段階で「用途地域・道路幅・容積率・斜線制限」を確認し、法令制限に即した形で最大限のプランを練り上げます。
不動産取引の現場でも、事前に「この土地では高さ制限があること」を重要事項説明で説明することが求められます。
■ まとめ
道路斜線制限は、都市の良好な環境を守るための基本的な制限であり、日照・採光・通風を守るための建築ルールです。
どの土地にも基本的にかかる制限であるため、住宅の設計・購入・売買の際には、用途地域とあわせて必ず確認しておきたいポイントといえるでしょう。
コメントをお書きください