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境界の調査方法と境界標の種類

 境界の調査方法と境界標の種類 

  土地売買前に確認すべき基本知識

 

 土地の売買において、もっとも重要な情報のひとつが「境界」です。

 境界が不明確なままでは、正確な面積(地積)が確定できず、売買価格の算出や建物の設計、再建築の可否にまで大きな影響を及ぼします。

 

■ 境界とは何か?

 境界には法律上の定義があります。

 登記法上は「筆界(ひっかい)」といい、土地が登記された時に公的に決められた区画線のことを指します。

 一方、一般的に使われる「境界」は、所有権の及ぶ範囲を意味し、現実の使用実態や隣人間の合意などに基づく線を指すこともあります。

 つまり、筆界と境界は一致するとは限らず、現況と登記のズレによってトラブルが生じることも少なくありません。

 

■ 境界調査の手順

 売却相談を受けた後は、できるだけ早い段階で以下の調査を行います:

1.   位置と方位の確認 住宅地図や地積測量図と照合し、方位磁石などで敷地の方向を確認します。

2.   地形・地勢の確認 高低差や造成の有無など土地の状況を観察し、公図と照合します。

3.   周囲の測定(周り間の計測) 敷地の外周をメジャーで測り、登記簿面積との相違をチェックします。

4.   接道状況の確認 建築基準法上の接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接していること)を満たしているかを確認します。

5.   境界標の確認 現地に設置された境界標の有無を確認し、必要に応じて測量士に依頼して復元や境界確定を行います。

 

■ 境界標とは?

 境界標とは、境界点を地上で明示するために設置される「しるし」のことです。

 正確な位置を把握し、トラブルを防ぐための重要な役割を担います。

 境界標には以下のような種類があります。

種類

特徴

コンクリート杭

一般的で永続性が高く、側面のへりが境界。

石杭

御影石や花崗岩製で最も耐久性が高く、美観も良い。

プラスチック杭

軽量で設置しやすいが耐久性に欠け、仮杭向き。

金属標・金属プレート

真鍮やステンレス製でプレートタイプ、

矢印先端が境界点。

金属鋲

ドリルでコンクリート面等に固定、都市部で多用。

木杭

一時的な杭として使用されるが数年で腐食する。

 

 特に都市部では、ブロック塀やコンクリート壁などに金属鋲を用いることが多く、住宅街では最も一般的な方法となっています。

 

■ 境界標がない場合は?

 境界標が見当たらない、あるいは破損している場合は、売買契約の前に土地家屋調査士に依頼して測量を行い、必要に応じて隣地所有者との立会い(民民査定)や、官公署との官民査定を通じて境界を明確にする必要があります。

 また、隣接地との間で境界争いがある場合は、裁判に代わる手段として「筆界特定制度」が活用されるようになっています。

 これは法務局に申し立てを行い、専門の筆界調査委員が調査を行ったうえで、登記官が筆界を特定する制度で、裁判に比べて費用も時間も抑えられます。

 

■ 境界標の法的位置づけ

 民法では以下のように定められています: 

1.   第223条:隣地所有者と共同費用で設置可能

2.   第224条:設置・保存費用は原則折半

3.   第229条:境界上にある標識は共有物と推定

 つまり、境界標は隣地と共有物とされており、勝手に撤去・移動すれば、損壊や器物損壊として処罰対象にもなり得ます。

 境界を明確にしておくことは、売却や相続、建築、貸地管理など、すべての不動産活動において欠かせません。

 境界調査はトラブル防止の第一歩。まずは「現地で見て、測って、確認する」ことから始めましょう。