「都市施設」と「都市計画施設」の違いとは?
似て非なる計画用語の基礎知識
不動産の調査や重要事項説明書の作成を行う際、「都市施設」や「都市計画施設」という言葉に出くわすことがあります。
一見よく似た言葉ですが、法律上の意味と取扱いには明確な違いがあります。
結論から言うと、
1. 都市施設:都市計画法で定められている施設の「分類・リスト」
2. 都市計画施設:都市計画として「実際に建設予定・整備予定」として都市計画決定されたもの
という違いがあります。
■ 都市施設とは?
都市施設とは、「都市における生活の基盤となる社会資本設備」の総称であり、都市計画法第11条により、その対象施設の種類が明確に定義されています。
たとえば次のようなものが都市施設にあたります:
1. 道路、公園、河川、駐車場、下水道、墓園などの公共インフラ
2. 学校、図書館、保育所、病院などの公共公益施設
3. 一団地の官公庁施設、住宅施設、流通業務団地などの大規模施設群
このように、都市施設は都市計画のなかで整備されるべき施設の「リスト」として存在し、現実に存在しているかどうか、整備されているかどうかは関係ありません。
■ 都市計画施設とは?
都市施設のうち、都市計画として具体的に位置や内容が定められたものが「都市計画施設」です。
つまり、「都市施設」の中から、本当に整備することが都市計画で決まった施設だけが「都市計画施設」となります。
都市計画施設には、次のような手続きが必要です:
1. 都市計画審議会での審議
2. 都市計画決定(公告)
3. 必要に応じた事業認可(都市計画事業)
たとえば、ある場所に将来的に道路を通すことが都市計画として決定されれば、その道路は都市計画施設となります。
計画が決まった段階でまだ道路は存在していなくても、「将来そこに道路をつくる」という決定がなされたのです。
■ 都市計画施設の影響(建築規制)
都市計画施設として決定された区域には、「建築制限」が課されることがあります。
都市計画法第53条に基づき、原則として許可なく建物の建築・増改築はできません。
これは、将来の都市計画事業(例:道路拡張や公園整備など)をスムーズに行うためで、所有者の権利は一定程度制限されることになります。
不動産売買では、対象地が「都市計画施設の区域内」であるかどうかを事前に確認し、重要事項説明書に明記しなければなりません。
■ 実務上のポイント
1. 「都市施設」はあくまで分類上の言葉で、全国どこでも共通
2. 「都市計画施設」は個別の都市計画で指定された具体的な施設
都市計画施設かどうかは、各自治体の都市計画図(都市計画決定図書)で確
都市計画施設にかかっている土地は、将来的に収用対象となる可能性がある
■ 例で理解する:Aさんの土地の場合
Aさんの土地の横に将来的に「都市計画道路」が通る予定だったとします。
この道路は、都市計画法第11条にある「道路」という都市施設に該当します。
そして「この場所にこの幅で道路を通す」と決定されていれば、それは都市計画施設になります。
Aさんの土地がその計画道路にかかっていれば、原則としてその部分に建物を建てることはできず、将来的に土地の一部が収用される可能性もあるということです。
まとめ:違いは「決まっているかどうか」
用語 |
意味 |
備考 |
都市施設 |
整備すべき施設の分類・リスト(抽象) |
全都市共通のリスト (都市計画法第11条) |
都市計画施設 |
都市計画で実際に建設を決定した施設(具体) |
都市計画決定がされている施設。建築制限の対象になることも |
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