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特定街区とは?

 特定街区とは?

  都市の統一的再開発を可能にする“特別ルール”

 

 「特定街区(とくていがいく)」とは、都市の中心部などにおいて、街全体を一体的に整備・再開発するために設けられる特別な都市計画区域のことです。  

 通常の敷地単位の制限ではなく、「街区(道路に囲まれたまとまり)」を単位として、高度利用や統一的デザインを可能にする制度です。

 

■ 特定街区の基本構造

 都市計画法第9条第20項において、「特定街区」とは、次のように定義されています。

 「市街地の整備改善を図るため、建築物の容積率・高さ・壁面位置の制限を特別に定める街区」です。

 つまり、都市の中心部などで、「この街区全体をきれいに再開発していきましょう」という目的のもと、通常の建築制限(建ぺい率・容積率・高さ制限など)を取り払い、その代わりに都市計画で別のルールを定めるのが特定街区です。

 

■ 特定街区でできること

a.   建ぺい率・容積率の緩和:都市計画で定めた数値まで引き上げ可能

b.   高さ制限の変更:通常の斜線制限(北側斜線・道路斜線など)を適用せず、都市計画で上限を定める

c.   壁面の位置の指定:建物を道路から一定の距離だけ後退させ、歩道や緑地スペースを確保

 これらの制限を「都市計画決定」によって特定街区ごとに定めるため、街全体として統一感のある景観形成やゆとりある都市空間づくりが可能になります。

 

■ どんな場所で使われている?

 特定街区の代表例が「西新宿の高層ビル群」です。

 東京都庁をはじめ、新宿住友ビルや新宿三井ビルなど、超高層ビルが立ち並ぶこのエリアは、かつて複数の街区をまとめて一体整備した「特定街区」に指定されたことにより、超高容積率・高層建築が実現しました。

 

■ 特定街区と高度利用地区の違い

 混同されがちな制度に「高度利用地区」がありますが、両者には明確な違いがあります。

区分

特定街区

高度利用地区

単位

街区単位

敷地単位(複数可)

対象エリア

区画が整った中心市街地など

密集地・駅前の再開発地など

計画の自由度

壁面位置も指定可能で自由度が高い

容積・高さ制限の範囲内

景観形成

統一的な都市景観を重視

土地の高度利用を重視

 

 特定街区は、景観や公共空間といった“まち全体の完成度”を重視する一方、高度利用地区は“土地の高度活用”に重きを置いている点がポイントです。

 

■ 特定街区に指定されるとどうなる?

 特定街区に指定されると、建築基準法で定められた一般的な建築制限(容積率・斜線制限・建ぺい率等)が一切適用されなくなります。

 代わりに、都市計画で定められた制限に従って建築することになります。

 したがって、たとえば通常であれば容積率400%の地域でも、特定街区で800%まで認められているなら、その範囲内で超高層ビルの建設が可能になります。

 

■ 容積率の移転も可能?

 特定街区では、隣接する敷地の使われなかった容積率を別の敷地に移す「容積率移転」が可能な場合もあります。

 これは、都市計画での定め方によりますが、限られた街区内でより効率的な土地利用を実現する仕組みです。

 

■ 実務での確認方法

 対象不動産が特定街区に含まれているかどうかは、各自治体の都市計画図や都市計画情報システム、または「◯◯市 特定街区」といったキーワードでインターネット検索すれば確認できます。

 不動産の重要事項説明書では、都市計画による建築制限として明記が必要です。

 

まとめ:

  •  特定街区は「都市をまとめて整える」ための特別ルール
  •  特定街区とは、都市計画に基づいて街区単位で統一的な建築ルールを適用するエリア
  •  一般の容積率や高さ制限ではなく、都市計画で別途定められた基準が適用される
  •  都市の景観形成・再開発・高度利用に大きな力を発揮する