土砂災害警戒区域・特別警戒区域とは?
イエローゾーンとレッドゾーンの違い
不動産の調査や売買において重要なリスク要因の一つが「土砂災害リスク」です。
日本は国土の約7割が山地という地形上、大雨による土砂災害(がけ崩れ・土石流・地すべり)が発生しやすい国です。
そのリスクから人命を守るために定められているのが、「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」と「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」です。
1. 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)とは?
土砂災害警戒区域とは、土砂災害が発生した場合に住民の生命または身体に危害が生じるおそれがある区域です。
これは土砂災害防止法第7条に基づき都道府県知事が指定するもので、以下のような特徴があります。
l 開発行為や建築行為は原則自由(制限なし)
l 地域住民への警戒避難体制の整備が図られる
l ハザードマップへの反映・説明義務あり
l 不動産売買では、重要事項説明書に記載義務あり(宅建業法35条)
つまり、イエローゾーンは「避難の必要性が高い区域」であり、建築規制はありませんが、リスクを可視化してソフト対策(避難・情報提供)を促進する区域です。
2. 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)とは?
レッドゾーンは、イエローゾーンの中でも危険度が特に高いエリアです。
具体的には、土砂災害が発生すると「建物が損壊し、住民に著しい危害が生じるおそれがある区域」とされており、土砂災害防止法第9条で規定されています。
指定されると以下の規制がかかります:
① 特定開発行為の許可制(第9条)→
宅地造成・社会福祉施設・病院などの開発には都道府県知事の許可が必要になります。
② 建築物の構造規制(第24・25条)→
新築や増改築の際、鉄筋コンクリート造(RC)などの耐土砂構造にしなければならないとされます。
③ 建築確認が必要→
都市計画区域外であっても建築主事への建築確認申請が必要です。
④ 移転の勧告・支援(第26条)→
所有者に対し、建物の移転勧告が可能。補助金や融資支援制度の対象になることもあります。
3. 実務での調査と対応ポイント
不動産実務では、対象地がイエローゾーンまたはレッドゾーンに該当しているかどうかを確認することが重要です。
以下の方法で調査します:
l 各都道府県の「土砂災害情報ポータル」で調査(例:「○○県 土砂災害 警戒区域」で検索)
l 市役所や県庁の都市計画課・防災課で確認
l ハザードマップを取得し、地図でリスク範囲を確認
4. 土砂災害区域と不動産価格
土砂災害区域に指定されると、不動産価格は下落する傾向があります。
特にレッドゾーンに該当する土地は、融資の審査に不利になることもあるため、売買時には価格調整や建築制限の説明が不可欠です。
まとめ
区域名 |
区分 |
内容 |
規制内容 |
土砂災害 警戒区域 |
イエローゾーン |
住民に危害が及ぶおそれがある区域 |
建築規制なし/ 避難体制強化 |
土砂災害 特別警戒区域 |
レッドゾーン |
建物損壊+住民に著しい危害のおそれ |
建築構造規制/開発許可制/建築確認必要 |
不動産の重要事項説明書には、これらの区域情報を必ず明記し、買主に説明する義務があります。
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