急傾斜地崩壊危険区域とは、「がけ崩れ」などによる土砂災害を防止・軽減するために、一定の行為を制限する必要があると判断された土地に対し、都道府県知事が指定する区域のことです。
傾斜角度が30度以上ある急傾斜地で、その崩壊によって周囲の住民の生命や身体に危害が生じるおそれがある場合、その区域が「急傾斜地崩壊危険区域」として指定されます。
これは「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(急傾斜地法)」に基づいており、災害リスクの高い土地の開発や利用に一定の制限を課すことで、安全性を高めることを目的としています。
指定を受けた区域では、がけ崩れを助長または誘発する行為について、都道府県知事の許可が必要になります。
具体的には、次のような行為が対象です:
(1)水をしみこませる行為、
(2)ため池・用水路などの施設の設置や改造、
(3)切土・盛土・掘削などの土地の改変、
(4)樹木の伐採、
(5)木の滑下搬出、
(6)土石の採取・集積、
(7)その他がけ崩れを引き起こす可能性のある行為。
これらの行為を無許可で行うことは、法令違反となります。
区域の指定は、都道府県知事が関係市町村長の意見を聴いて行います。
対象となるのは、崩壊によって「相当数の居住者」に危険が及ぶと認められる場所であり、単に斜面があるだけでは指定されません。
指定されると、原則としてがけ崩れ防止工事(擁壁・排水施設など)は公費により行われることが多くなります。
ただし、その工事によって直接的に利益を受けると認められる土地所有者には、一部費用の負担が求められる場合もあり、これを「受益者負担金」といいます。
一方、区域に指定されたからといってメリットばかりとは限りません。
がけ崩れのリスクが高いことを公的に認定されたことになり、不動産としての評価や取引価格に影響を及ぼす可能性があります。
また、新築や改築など建築行為を行う場合にも都道府県の許可が必要となり、通常よりも手続きや工事費用がかかることもあります。
がけ崩れは突然発生し、避難が間に合わずに人的被害が出ることが多いため、特に厳重な対策が求められています。
日本は山がちで住宅密集地の多くが斜面地に隣接しており、実際に毎年のように各地で崩壊事故が発生しています。
そのため、急傾斜地崩壊危険区域の指定は、住民の生命を守るための防災対策の一環として重要な役割を果たしています。
このように、急傾斜地崩壊危険区域の指定は、災害防止という観点から必要不可欠な制度ですが、そこに土地を所有・利用する場合には、法令による制限や経済的な影響も含めて十分な理解と準備が求められます。
区域の調査や手続きについては、役所の都市計画課や県庁の土木部門などに確認することができます。
コメントをお書きください