用途地域が2つ以上にまたがっている土地については、建物の用途・建ぺい率・容積率・高さ制限・防火規制など、それぞれの制限項目ごとに適用方法が異なるため、注意が必要です。
以下に、項目ごとの適用ルールをわかりやすく整理してご説明します。
① 建物の用途制限
→ 敷地全体に対し、「面積の大きい方の用途地域」が適用される。
たとえば、敷地のうち60㎡が第2種中高層住居専用地域、40㎡が第1種低層住居専用地域だった場合、第2種中高層住居専用地域の用途制限が全体に適用されます。
② 建物の高さ制限
→ 用途地域ごとに制限される。
建物がまたがって建つ場合、それぞれの地域にかかる部分ごとに次のような制限があります。
a. 絶対高さ制限:第1種低層では10mや12mなどの制限あり。
b. 斜線制限・高度地区:用途地域に応じて異なる。
c. 日影規制:建物の影が落ちる場所で、最も厳しい規制を基準に適用。
例:北側が第1種低層住居専用地域で10m制限、南側が中高層地域で25m可能でも、北側には10m制限が適用。
③ 防火地域・準防火地域
→ 建物が少しでも防火地域にかかっている場合、敷地全体に最も厳しい規制が適用される。
例えば、建物の一部でも防火地域にかかっていれば、全体を防火構造で建築する必要があります。
④ 建ぺい率・容積率
→ 各地域ごとに面積の加重平均で算出。
【建ぺい率の計算式】
(用途地域Aの面積 × Aの建ぺい率)+(用途地域Bの面積 × Bの建ぺい率)÷ 敷地全体の面積
【容積率の計算式】
(用途地域Aの面積 × Aの容積率)+(用途地域Bの面積 × Bの容積率)÷ 敷地全体の面積
※ただし、容積率は前面道路幅員による制限(道路幅×法定係数)との比較で、小さい方が採用されます。
⑤ まとめ:
複数用途地域にまたがる土地の調査ポイント
項目 |
適用方法 |
建物の用途 |
面積が大きい方の用途地域 |
建物の高さ |
用途地域ごとの制限(影は最も厳しい規制) |
防火規制 |
最も厳しい規制が全体に適用 |
建ぺい率・容積率 |
面積按分の加重平均で計算 |
用途地域が複数ある敷地では、単純に「一番厳しいか一番緩いか」ではなく、各制限ごとに根拠の異なるルールが適用されるのがポイントです。
不動産売買や建築計画を行う際には、都市計画図・建築指導課での確認が必須となります。
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