認知能力が低下した高齢者が“カスハラ加害者”になるとき
高齢化が急速に進む日本では、カスタマーハラスメント(カスハラ)が企業の深刻な課題となっています。
特に最近増えているのが、認知能力が低下した高齢者によるカスハラ行為です。
2025年には75歳以上が人口の約18%に達すると言われており、現場の負担はこれからさらに重くなると見込まれます。
行政書士として現場の相談を受けていると、
「認知症の方への対応に“毅然とした態度”を取ってよいのか?」
「 家族にどこまで協力を求めていいのか?」
といった戸惑いの声が多く寄せられます。
認知症が引き起こす“怒り・暴言・暴力”
認知症の進行により、次のような行動が現れることがあります。
- 突然怒鳴る
- 暴言・暴力
- 理由の分からない不安・焦燥
- 自尊心が傷つき、過剰に反発する
- 状況を理解できない、または忘れてしまう
介護の現場ではよく知られている症状ですが、スーパー、病院、公共窓口、銀行、役所など、日常生活のあらゆる場面で発生しています。
“自分の状況を理解できない”“理解しても忘れる”という特性は、カスハラ行為の「制御の難しさ」につながっています。
通常のカスハラとは違い“止めることが難しい”
通常のカスハラ加害者の場合、
- 警察対応
- 出入り禁止
- 書面での警告
などを繰り返すと、多くは収束に向かいます。
しかし――
認知症の高齢者の場合、「自分が不利な状況に置かれている」こと自体を認識できない
または、認識してもすぐに忘れてしまう
という特徴があります。
そのため、
- 何度注意しても伝わらない
- 通報されても気にしない
- “禁止された事実”を翌日には忘れている
- 正義感だけが強まっていく
結果として、行為が繰り返され、悪循環に陥ることがあります。
行政書士としての見解
ここからは、現場相談を受けてきた行政書士として、法律面・リスク管理の視点を交えてお伝えします。
① 「高齢者=顧客」よりも「従業員の安全」が最優先
企業は、労働契約法・安全配慮義務の観点から、従業員を危険から守る義務があります。
相手が認知症であっても、暴言・暴力を受けてよい理由にはなりません。
行政書士の立場からも、
「同情のあまり毅然とした対応を避ける」のは、リスク管理として誤りです。
② 認知症の家族が加害者になる場合、家族との連携が不可欠
身内が認知症と自覚している家族は、事態を理解しやすい傾向にあります。
企業としては、
- 事実経過の文書化(日時・内容・担当者)
- 映像・録音記録
- 家族への正式な説明
を行い、“今後の入店・利用制限について家族にも協力してもらう”という形が現実的かつ効果的です。
家族が理解していない状況で企業だけが対応すると、不要なトラブルに発展する可能性もあります。
③ 出入り禁止や通報は「法的に正当」
出入り禁止は店舗の管理権に基づく行為であり、認知症であっても適用できます。
暴力・暴言があれば110番通報も当然に可能です。
重要なのは、
“反復継続的な迷惑行為”が記録として残っていること。
行政書士として書面作成を依頼されることもありますが、記録が整っている企業ほどトラブルが早く収束します。
④ 従業員への指導と組織体制が“防波堤”になる
個人の判断に任せると、
- 若い従業員が過度に我慢する
- ベテランが独断で対応する
- 店舗ごとに判断がバラつく
といった問題が発生します。
行政書士として推奨するのは、以下のような“組織対策”です。
- マニュアル整備
- 高齢者・認知症への基礎知識共有
- エスカレーションルールの明確化
- 記録システムの導入
- 家族対応のテンプレート化
- 警察・地域包括支援センターとの連携
特に地域包括支援センターとの連携は非常に有効で、「家族との調整」までサポートしてくれる場合があります。
カスハラ加害者に多い“4つの特徴”
認知症の問題を踏まえつつ、一般のカスハラ加害者に共通する特徴も整理しておきます。
① 独自の強烈な正義感
「自分は100%正しい」という確信を持ち、説得が通じません。
② 弁が立つ
話術が巧みで、従業員が翻弄されやすい。
③ 経験者が多い
“クレームを入れる流れ”を熟知しており、厄介。
④ 言いやすい相手を選ぶ
若い従業員や女性スタッフなど、“弱いところ”を狙う傾向。
まとめ:
企業は「理解」と「防衛」の両立が必要
認知症によるカスハラ行為は、“本人の意思ではコントロールできない”場合もあります。
とはいえ、だからといって従業員が被害を受けてよいはずはありません。
企業としては、
相手への理解と従業員への安全確保をバランスよく実施すること。
行政書士として強調したいのは、
「記録」と「家族との連携」
そして
「毅然とした対応の継続」が重要だということです。
高齢化社会の中で、企業と従業員を守るための仕組みづくりは、ますます必要になっていくでしょう。

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