家族信託と遺留分問題
財産承継を成功させるために
家族信託は、親の財産管理を子に託し、老後や相続に備える制度です。
信託財産は親自身の資産とは隔離され、「信託受益権」として扱われます。
たとえば、父親を受益者、長男を受託者とした場合、父の死亡後、信託契約に定めた承継先に財産を引き継ぐことができます。
家族信託は、円滑な財産管理と資産承継を可能にする有力な手段です。
しかし、注意すべきは「遺留分」です。
遺留分とは、一定の法定相続人が最低限相続できる権利のこと。かつて信託財産は遺留分請求の対象外と考えられていましたが、現在では「みなし相続財産」とされ、遺留分の対象になります。
特に平成30年の地裁判決では、「信託財産も遺留分侵害額請求の対象となる」「遺留分回避目的の信託契約は無効になり得る」と明確に示されました。
家族信託はあくまでも「受益者のための財産管理」が本質です。
単なる遺留分対策や税金対策のみを目的にした信託設計は、無効リスクや相続争いの火種になるため慎重に設計すべきです。
対策として重要なのは、親と子がきちんと話し合い、老後の希望や資産承継の意向を共有すること。
家族会議を開き、親が自身の思いを子に伝え、貢献度や事情に応じた財産配分を検討するべきです。
不満を持つ子には、生前贈与の履歴や介護への関与など、具体的な理由を説明することで、将来の争いを防ぐことが期待できます。
また、親が高齢や体力低下で意思を十分に示せない場合に備え、第三者(弁護士・司法書士など)を交えた公正な手続きと記録化が有効です。
家族信託の実行は、信頼関係と事前準備が不可欠。
遺された家族の絆を守るためにも、慎重な設計と専門家の支援を受けることをおすすめします。

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