家族信託にお手軽な「ひな型」はない
「家族信託契約に使える“ひな型”はありますか?」という質問を、たびたび受けることがあります。
しかし結論から言えば、家族信託には「ひな型」や「テンプレート」といえるような、すべてのケースに通用する汎用的な契約書は存在しません。
インターネットや書籍で紹介されている信託契約書の多くは、「特定の事例を前提にすれば、こういった形が考えられる」という“参考例”に過ぎません。
家族構成、財産の種類・規模、本人の想いや家族それぞれの事情が異なる以上、すべての家族に適した共通の契約書など存在しないのです。
しかし、表面的な情報のみを鵜呑みにし、「回答例」に個別事情を当てはめるだけで信託契約書が完成すると誤解している法律専門職も一部存在します。
こうした場合、家族会議を経ず、家族の想いや立場をすり合わせないまま契約書を形だけ整えてしまう危険性があります。
そのように作られた信託契約書が、将来、家族内での紛争やトラブルを招く可能性は否定できません。
- 代表的な“危ない契約書”としてまず挙げられるのが、「条文数がやたらと多いもの」です。
信託銀行など商業型信託で使われる契約書を簡略化し、そのまま40条前後のボリュームに整えただけの家族信託契約書が見られますが、そもそも商事信託と家族信託では成り立ちが違います。
商事信託では、受託者の責任範囲を厳密に定める必要がありますが、家族信託では信頼関係を前提とし、親の想いをどう実現するかが中心になります。
目的が違う以上、条文構成も自ずと変わるべきです。
- また、不要な要素を無理に入れている契約書も注意が必要です。
たとえば、書籍などに書かれていたからといって、必要もないのに「信託監督人」や「受益者代理人」を設定してしまうケースもあります。これらは契約当事者ではない第三者ですが、場合によっては不要どころか、かえって関係を複雑にしてしまうこともあります。
本来、家族信託はオーダーメイドで設計すべき制度です。
すべての条項について「なぜ置くのか/置かないのか」を、専門家が明確に説明できなければなりません。
「本に書いてあったから」「ひな型にあったから」では理由になりません。家族全員が納得し、理解できる契約内容であることが、信頼される契約書の基本です。

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