有価証券を信託財産にする際の注意点と可能性
家族信託において、子ども(受託者)が管理を担う財産としては、現金・不動産・未上場株式がよく使われています。
一方で、上場株式や国債、投資信託といった「有価証券類」については、法的には信託に含めることが可能ですが、実務上はいくつかの制約があります。
上場株式は、証券会社を通じて名義書換代理人(信託銀行等)によって株主名簿が管理されています。
しかし現時点では、多くの証券会社が家族信託への対応体制を整えておらず、名義書換が実行できない可能性があります。
そのため、信託契約が有効であっても、受託者が正式に株主として認識されず、株主総会の通知などが届かないケースがあるのです。
これは上場株式に限らず、国債や外国債、投資信託など他の有価証券でも同様です。
しかし、最近では大和証券が家族信託への正式な対応を始めたことを受け、今後は他の証券会社も対応を広げていくと考えられます。
対応している証券会社を利用すれば、以下の2つの点で有利な対応が可能となります。
- 一つ目は、受託者による有価証券の換価処分です。
親が保有する上場株式や投資信託を信託財産として託すことで、判断能力が低下した場合でも受託者が売却手続を行い、その資金を介護費用や生活費に充てることが可能になります。
代理人制度を用いてもよいのですが、代理人制度では親の判断能力が失われると権限も消滅してしまいます。
その点、信託口口座を活用すれば、より安定的に資産管理が継続できます。
- 二つ目は、受託者による有価証券の任意運用です。
親の余剰資金を信託財産として託し、信託契約の中に投資運用の権限を明確に記載しておくことで、子が受託者として親の意向に沿った資産運用を行うことができます。
低金利時代において、将来に備えた資産活用として、親の意思を形にする手段となるでしょう。
なお、有価証券を信託財産に含める場合には、証券会社側で受け入れ可能な信託契約書であることが条件になります。
実務上は、家族信託に精通した専門家が関与し、公正証書で作成された契約書が必要です。
証券会社への持ち込みを前提とする場合は、まず法律専門職に相談してから手続きを進めるのが確実です。
また、現在の証券会社が家族信託に対応していない場合には、対応可能な証券会社への口座移管を行うことも検討されます。
ただし、移管には手数料がかかる場合があり、証券会社独自の商品(特定の投資信託など)は移管不可のこともあるため、事前確認が必要です。

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