一般的な家族信託で利用する「信託口口座」とは?
家族信託は、親が委託者となり、子どもなどの家族が受託者として財産を管理する制度です。
認知症などで判断能力が低下した場合でも、あらかじめ信託契約を結んでおけば、受託者が契約に基づいて親の財産を管理・活用できる仕組みです。
この家族信託の運用において重要な役割を果たすのが、「信託口口座(しんたくぐちこうざ)」です。
- 信託口口座とは?
信託口口座とは、信託財産(主に金銭)を管理するために開設される専用口座で、名義は「委託者〇〇 受託者△△ 信託口」といった形で、信託財産であることが外見上も明確になります。
信託法では、受託者に「分別管理義務(第34条)」が定められており、受託者の個人財産と信託財産を明確に区別して管理しなければなりません。
この義務を適切に果たすため、信託金銭は「信託口口座」で管理するのが理想とされています。
信託口口座の3つのメリット
1.信託財産の分別管理がしやすい
信託口口座は、信託財産であることが名義から明確であり、通常の個人口座と区別できます。
通帳や取引履歴も一元管理できるため、帳簿作成や報告(信託法第37条)も簡単になります。
信託事務の透明性が高まり、万が一のトラブル防止にもつながります。
2.差押えを防ぐ「倒産隔離機能」がある
信託財産は、委託者や受託者の債務とは完全に独立した財産です。
そのため、仮に委託者や受託者が破産した場合でも、信託口口座の中のお金は差押えや強制執行の対象にはなりません(信託法第23条・25条)。
家族信託ならではの安心の仕組みといえます。
3.口座が凍結されない
委託者や受託者が死亡しても、信託口口座は凍結されずに継続利用できます。
これは、口座の資金が委託者や受託者の私有財産ではなく、信託財産であるためです。
信託契約で「第二受託者」を定めておけば、その者がスムーズに管理を引き継ぐことができます。
一方、受託者の個人口座で信託財産を管理していた場合、受託者の死去によって口座が凍結され、遺産分割協議など煩雑な手続きが必要になる可能性があります。
信託口口座の開設にあたっての注意点
信託口口座の開設には、金融機関によって取り扱い可否や必要書類、審査基準が異なります。
まずは信託契約書の案を金融機関に提出してリーガルチェックを受けることが一般的です。
公正証書にしてから提出すると、修正が困難になるため、事前確認が重要です。
なお、2020年代以降、家族信託の普及に伴い、地方銀行や信用金庫を中心に信託口口座に対応する金融機関が徐々に増えています。
メガバンクでは未対応な場合も多いため、開設実績のある地域金融機関の活用が現実的です。
信託口口座に対応している主な銀行(例)
【東北地方】山形銀行、七十七銀行、秋田銀行
【関東地方】三井住友信託銀行、京葉銀行、横浜銀行、武蔵野銀行
【中部地方】八十二銀行、百五銀行
【近畿地方】京都銀行、三十三銀行
【四国・中国・九州地方】広島銀行、愛媛銀行、福岡銀行、沖縄銀行 など
※対応状況は支店によっても異なるため、事前確認が必要です。
まとめ
家族信託の金銭管理を安全かつ円滑に行うには、「信託口口座」の開設が非常に有効です。
信託財産の管理・相続対策を確実に実行するためにも、信託制度に詳しい専門家と連携しながら、信託口口座の活用を前提とした設計を行うことをおすすめします。

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