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ヘイトスピーチはなぜ処罰されないのか ― 刑事規制の欠如とその背景

ヘイトスピーチはなぜ処罰されないのか 

 ― 刑事規制の欠如とその背景

 

 「◯◯人は出ていけ!」

 ―かつて新大久保や鶴橋などで、在日コリアンを標的とした大規模デモが繰り返されました。

 通行人や子どもたちにまで浴びせられる差別的な言葉の数々。

 しかし日本の刑法には、こうしたヘイトスピーチを直接禁止・処罰する規定が存在しません。

 この“抜け穴”は、長らく国際社会からも問題視されてきました。

  • 名誉毀損・侮辱罪は使えない?

 現行刑法の「名誉毀損罪」「侮辱罪」は、基本的に個人や特定少数への攻撃が対象です。

 一方、ヘイトスピーチの多くは「◯◯民族全体を侮辱する」といった不特定多数への発言であり、従来の枠組みでは適用が困難でした。

 そのため、在日コリアンへの連続デモや街頭での大量中傷は、当初は刑事事件にできず、事実上“野放し”の状態が続いたのです。

  • ヘイトスピーチ解消法とその限界

 2016年にようやく「ヘイトスピーチ解消法」が成立しました。

 しかしこの法律は 理念法(努力義務型)にとどまり、罰則が一切ありません。

 差別的な言動を「やめよう」と呼びかけるにとどまり、違反者を処罰する仕組みは整備されませんでした。

 結果として、デモやネット上の中傷は続き、被害者側からは「結局何も変わっていない」との声が噴出しました。

  • 国際社会からの批判と地方の動き

 国連の人種差別撤廃委員会は、日本に対して繰り返し刑事規制を導入するよう勧告してきました。

 しかし国としては「表現の自由」を理由に及び腰の対応を続けています。

 その一方で、地方自治体が先行しました。

 2019年、川崎市は日本で初めて罰金付きのヘイトスピーチ禁止条例を制定し、繰り返す違反者には刑事罰を科せる仕組みを導入しました。

 実際に摘発例も出ており、全国的にも注目されました。

  • なぜ「抜け穴」が残されるのか?

 背景には、憲法21条が保障する表現の自由があります。

 「差別的な発言」と「思想・表現の自由」をどう線引きするのかが難しく、国としては慎重な姿勢を取ってきたのです。

 しかし現実には、差別的言動が社会の分断を深め、在日外国人やマイノリティの生活を脅かしているのも事実です。

 刑事規制の欠如は、「やり得」の温床となり、法の抜け穴として批判されています。

 

まとめ

  •  日本の刑法はヘイトスピーチを直接禁止していない。
  •  名誉毀損・侮辱罪は個人対象であり、人種・民族全体への攻撃には適用しにくい。
  •  2016年のヘイトスピーチ解消法は罰則がなく実効性に乏しい。
  •  国連からも規制を求められ、川崎市では罰金付き条例を制定。
  •  表現の自由と人権保障のバランスが課題となっている。