相続調停でよくある誤解
:遺言があるのに調停になるのはなぜ?
「父がきちんと遺言を残していたのに、家庭裁判所から遺産分割調停の呼出状が届いた…」
そんな経験をされた方はいませんか?
多くの方が「遺言があれば争いはなくなるはず」と考えています。
ところが現実には、遺言があっても調停になるケースは珍しくありません。
その理由を整理してみましょう。
理由① 遺言の内容が不明確
遺言には「財産の範囲や分け方がはっきり書かれていない」ことがあります。
「自宅は長男に相続させる」と書いてあるが、土地と建物の登記が分かれていて混乱
預貯金を「妻に渡す」とあるが、具体的な口座が特定されていない
このように文言が曖昧だと、相続人同士で解釈が食い違い、調停に持ち込まれることになります。
理由② 遺留分の侵害
遺言の内容が、相続人の最低限の取り分(遺留分)を侵害している場合、相続人は「遺留分侵害額請求」を行えます。
例:
全財産を長男に相続させると遺言にあっても、次男や配偶者には遺留分があるため、不公平を調整する必要が生じます。
結果、遺留分を巡る金銭清算をどうするか という協議が進まず、家庭裁判所での調停に発展するのです。
理由③ 遺言の有効性を巡る争い
遺言者が認知症で判断能力がなかったのでは?
署名押印が不十分で形式に不備があるのでは?
特定の相続人に有利すぎる内容で「無理やり書かされたのでは?」
こうした主張が出ると、遺言自体の有効性が争われ、調停や審判に移行することがあります。
理由④ 財産の漏れ・新発見
遺言がカバーしていない財産が見つかることもあります。
例:
遺言には自宅や預金が記載されているが、実は有価証券や別口座が後から判明。
この場合、その部分については別途遺産分割協議が必要で、話し合いがつかないと調停に発展します。
理由⑤ 相続人間の感情的対立
「父は兄ばかり優遇してきた」「母が介護してもらった恩を無視している」
遺言があっても、相続はお金だけでなく感情が絡みます。
遺言をきっかけに古い不満が噴き出し、結局は調停の場で冷静に整理する必要が出てくるのです。
調停になったらどうする?
遺言があるのに調停になると「無駄では?」と思う方もいますが、実は調停には意味があります。
- 第三者(裁判官・調停委員)が間に入り、冷静に議論できる
- 遺留分や不明確な部分を整理し、実際に執行可能な形に整える
- 家族間の感情を調整する機能がある
つまり調停は「遺言を現実の形に落とし込むためのプロセス」ともいえます。
専門家の活用ポイント
- 遺言が有効かどうかの判断
- 遺留分の計算や侵害額の算定
- 曖昧な文言を法的に整理して実務に落とし込む
これらは専門家(行政書士・弁護士・司法書士)に相談することでスムーズに進められます。
まとめ
遺言があっても調停になるのは次のような場合です。
- 内容が不明確
- 遺留分の侵害
- 遺言の有効性に疑義がある
- 財産の漏れがある
- 相続人間の感情対立
つまり、遺言は万能ではなく「適切に書かれ、適切に実行されること」が大切なのです。

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