相続調停でよくある誤解
:家族信託をしていれば調停は不要?
「親が元気なうちに家族信託を組んでおけば、相続のときに調停なんて無関係ですよね?」
こうした質問をよく受けます。確かに家族信託は柔軟な財産管理・承継の仕組みであり、相続トラブルを予防する有効な手段です。
しかし、実際には「家族信託=絶対に調停不要」とはいえません。
家族信託が万能ではない理由を整理してみましょう。
家族信託の仕組み
家族信託とは、財産の所有者(委託者)が信頼できる家族(受託者)に財産を託し、その管理や処分を任せる制度です。
- 受託者が契約に基づき財産を管理
- 受益者が利益を受け取る
- 委託者の意思を契約で具体的に反映できる
これにより、認知症対策や事業承継対策に活用され、「相続の争いを防ぐ手段」として注目されています。
「調停が不要」と思われる理由
- 信託契約に従って財産を管理・承継できるため、遺産分割協議が不要になる
- 契約内容が明確なので、相続人間の解釈争いを防ぎやすい
- 成年後見制度より柔軟に対応できる
確かにこれらの点で、相続調停に発展する可能性を大幅に減らすことができます。
それでも調停になるケース
1. 信託契約に含まれていない財産がある
家族信託に組み込んだのは自宅不動産だけで、預貯金や有価証券を忘れていた場合。
→ その財産については通常の相続が発生し、分割協議や調停の対象になります。
2. 契約内容の不備
信託契約書の文言が曖昧で「受益権を誰に承継させるか」が不明確な場合。
→ 相続人間で解釈が分かれ、結局は調停で整理することに。
3. 信託を知らない相続人の不満
「自分に相談もなく不動産を信託したなんて納得できない」と、相続人から感情的な反発が出るケース。
→ 法的には信託契約が優先するが、感情面で折り合わず調停に発展することもあります。
4. 遺留分侵害の可能性
信託契約で一部の相続人に有利な承継を設定すると、他の相続人が「遺留分侵害」と主張する場合があります。
→ 法律上、信託も遺留分の算定対象に含まれるため、調停・裁判の場に持ち込まれることがあります。
実務家からのアドバイス
- 財産を漏れなく信託に組み入れること
不動産だけでなく、預金・株式・保険なども対象に含めると効果が高まります。
- 契約文言を明確にすること
誰がいつ、どのように権利を承継するかを具体的に記載しておくことが重要です。
- 相続人に説明しておくこと
家族に内緒で信託をすると感情的対立を招きます。あらかじめ理解を得ておくことが、調停を避ける最大の予防策になります。
まとめ
家族信託をすれば「遺産分割協議が不要」になるため、調停リスクは大きく減ります。
しかし、
- 信託外の財産
- 契約の不備
- 相続人間の感情的対立
- 遺留分問題
といった要因から、調停に発展する可能性はゼロではありません。
家族信託は「相続トラブルを減らす有力なツール」ですが、「万能の特効薬」ではない―この点を理解しておくことが大切です。

コメントをお書きください