相続調停でよくある誤解
:相続放棄をしたはずなのに調停に呼ばれる?
「もう相続放棄したのに、家庭裁判所から調停期日の呼出状が届いた…」
こうした声を実務でもよく耳にします。
多くの方は「相続放棄=完全に関係がなくなる」と考えがちです。
ところが現実には、放棄した人も調停に呼ばれることがあるのです。
なぜそのようなことが起こるのでしょうか?
相続放棄の効力とは?
相続放棄をすると、その人は 最初から相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。
つまり、法律上は「相続に一切関係ない立場」になるわけです。
ところが実務では、放棄した人にも裁判所から通知や呼出が届くケースがあります。
呼ばれる理由①
相続放棄の手続きが完了していない
家庭裁判所で相続放棄の申述をしても、裁判所が「受理決定」を下さなければ効力は発生しません。
- 書類に不備がある
- 期限(相続開始から3か月以内)を過ぎている
- 形式的に不受理とされている
この場合、「放棄したつもり」でも実際にはまだ相続人のまま。
結果として調停に呼ばれるのです。
呼ばれる理由②
他の相続人が放棄を知らない
相続放棄が受理されても、その情報は自動的に他の相続人に伝わるわけではありません。
- 他の相続人が「全員を呼ばなければ」と思って申立てる
- 裁判所が形式的に「戸籍上の相続人」を全員呼び出す
こうした理由で「放棄済みの人」にも調停呼出状が届くことがあります。
呼ばれる理由③
利害関係人としての立場
相続放棄をすると、その人は相続人ではなくなりますが、次順位の相続人(例えば甥や姪)が代わりに相続人となることがあります。
その結果、放棄した人にも「事情を確認するため」「証拠提出のため」に調停への関与を求められる場合があります。
実際の具体例
山形市に住むAさんが亡くなり、相続人は妻と2人の子ども。
次男は「借金が多いから相続放棄する」と家庭裁判所に申述し、受理されました。
ところが、その後に妻と長男が遺産分割調停を申し立てた際、次男にも呼出状が届きました。
理由は:
- 調停委員が「本当に放棄済みか」を確認するため
- 戸籍上の相続人として形式的にリストに含められたため
最終的には次男の放棄が確認され、実質的な関与は不要になりました。
どう対応すべきか?
- 相続放棄の受理証明書を提出する
家庭裁判所から受理通知が届いていれば、それを提示すれば相続人から外れることが確認されます。
- 呼出状を放置しない
無視するとトラブルになるため、必ず「放棄済み」を伝え、必要書類を出すことが大切です。
- 専門家に相談する
期限切れや不受理の場合は、放棄が無効になっている可能性があります。
その際は債務を含めて相続人として責任を負うことになるため、弁護士や行政書士に早めに相談するのが安全です。
まとめ
相続放棄をしたはずなのに調停に呼ばれるのは、不思議なことではありません。
- 手続きが未完了の可能性
- 他の相続人や裁判所が「形式的に全員を呼ぶ」場合
- 利害関係人としての確認目的
このような事情があるためです。
放棄済みの人は「私はもう関係ない」と思い込まず、呼出状が届いたら必ず確認を行いましょう。
証明書を出せば多くの場合、早期に関与から外れます。

コメントをお書きください