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不動産業界の隠語「抱き合わせ」とは?

 不動産業界の隠語「抱き合わせ」とは?─人気物件の裏で在庫をさばく営業戦術

 

 不動産業界の現場には、独特の“隠語”や“裏ワザ”が存在します。

 そのひとつが「抱き合わせ」。魚や商品をまとめて売るように、売れやすい物件と売れにくい物件をセットで販売する手法を指します。

 表向きには聞こえのいい言葉ではありませんが、現場では今でも活用されることがある営業戦術です。

 

 抱き合わせの意味

 

 「抱き合わせ」とは、人気物件だけを単独で売らずに、在庫処分したい不人気物件を“おまけ”ではなく“セット条件”として必ず付けて販売することをいいます。

 単独ではなかなか売れない物件でも、人気物件と組み合わせることでまとめて契約させてしまう、いわば「強制パッケージ販売」です。

 

 この発想は、実は不動産業界以外でも見られます。例えばパソコンとソフトをセットで売る販売手法、遊園地のチケットとグッズをセットにする販売など。 

 ただし不動産の場合は金額が大きく、登記や融資の条件にも関わるため、注意が必要です。

 

実例:駅前マンション+郊外の区画

 

 具体例を挙げましょう。山形市の駅前にある人気のマンション区分所有権。

 投資家にとっては需要が高く、問い合わせも多数ありました。

 ところが売主側は「郊外に残っている区画も一緒に売って欲しい」という要望を出してきます。

 

 そこで営業担当は、駅前マンションと郊外区画を「2物件まとめ売り」として打ち出しました。

 投資家からは「駅前だけ欲しい」と相談があったものの、営業はこう説明しました。

 

> B(買主):「駅前だけじゃダメですか?」

> S(営業):「申し訳ありません、売主様の意向でセット販売なんです」

> B:「じゃあ仕方ないですね…」

 

 結果として投資家は両方をまとめて購入。

 売主は抱えていた在庫を処分でき、営業も売上を確保できました。

 これが典型的な「抱き合わせ」です。

 

抱き合わせのメリットとデメリット

 

メリット(売主側)

 

* 売れ残り物件を効率的に処分できる

* 人気物件の勢いを利用して在庫整理ができる

 

メリット(業者側)

 

* 成約件数・売上の増加

* 売主からの信頼獲得(在庫処分に貢献した実績)

 

デメリット(買主側)

 

* 本来欲しくない物件まで購入するリスク

* 融資が2物件分必要になるケースがあり、資金計画が複雑化する

 

デメリット(法的リスク)

 

* 抱き合わせ販売は場合によって「独占禁止法」に抵触する可能性がある

* 契約の独立性や融資条件を誤魔化すとトラブルに発展

 

  抱き合わせ成功のポイント

 

1. 人気物件の魅力を徹底的に見せる

    セット条件を納得させるために、まずはメイン物件の良さを最大限にアピールする。

 

2. 売主との合意形成

    抱き合わせは売主の意向が大前提。無理に仕掛けてもトラブルの火種になる。

 

3. 法的制限の確認

    独禁法や宅建業法、金融機関の融資条件に照らし、セット販売が違法・不適切にならないか確認する。

 

4. 契約形態の工夫

    「同時契約」や「同一売買契約書」でまとめるのか、「別契約で同時決済」にするのか。登記や融資の扱いに応じて設計する必要がある。

 

 抱き合わせが選ばれる背景

 

 抱き合わせ販売は「悪質な売り方」というイメージも強いですが、必ずしもネガティブな手法ではありません。

 売主にとっては資産整理の一環であり、買主にとっても「人気物件と一緒なら条件面で得をする」ケースもあるからです。

 

 例えば、郊外の土地を単独で買うと値引きが難しくても、人気マンションとまとめ買いすれば価格交渉の余地が広がることもあります。

 つまり「損をしているようで、結果的には得をしている」というケースもあるのです。

 

 まとめ─抱き合わせは“光と影”の戦術

 

 不動産業界における「抱き合わせ」は、人気物件の力をテコに売れにくい在庫を処理する営業戦術です。

 売主にはメリットが大きい一方で、買主にとっては不本意な契約につながることもあり、営業担当者の倫理観と調整力が問われます。

 

 一般の人が聞けば「そんな売り方ありなの?」と思うかもしれませんが、現場では今でも存在するリアルな取引方法のひとつです。

 大事なのは「売主・買主・業者の三方良し」に近づけること。

 抱き合わせがトラブルではなく、納得のいく契約になるかどうかは、営業担当の腕次第なのです。