不動産業界の隠語「両手仲介」とは?─一件の取引で両方から手数料を得る戦術
不動産売買の世界には、一般の方には耳慣れない「隠語」が存在します。
その中でも特に有名であり、かつ業界ならではの光と影を象徴するのが「両手仲介(ダブルブローカー)」です。
一件の取引で、売主と買主の双方から仲介手数料を得られるため、業者にとっては大きな利益が見込めます。
しかし、そこには“利益優先”と“顧客利益”のバランスという、微妙で重要な課題も隠されています。
両手仲介の意味
両手仲介とは、1つの不動産取引において、売主側の仲介と買主側の仲介を同時に自社で担うことです。
通常、不動産の売買契約は以下の2つの形態に分けられます。
* 片手仲介:
売主または買主、どちらか一方を担当し、片側からのみ仲介手数料を受け取る。
* 両手仲介:
売主と買主の両方を担当し、両方から仲介手数料を受け取る。
片手よりも両手のほうが、業者にとっては単純に「手数料が2倍」になるため、業界では昔から「両手を狙え」と言われることが多いのです。
実例:山形市の中古住宅取引
例えば山形市内の中古住宅。
売主は「近所に知られずに売りたい」と考えて専任媒介契約を結びました。
営業担当はレインズに登録はしたものの、他社への紹介は控え、自社顧客を優先して案内しました。
結果、1か月後に自社の顧客(買主)が現れ、成約。
売主からは「成約価格の3%+6万円」、買主からも同様に仲介手数料を得て、会社にとっては片手仲介の2倍の収益となりました。
会話例に見るリアルな現場
S(営業):「ご安心ください、この物件は他社よりも早く私の顧客に紹介できます」
O(売主):「なるべく早く売ってほしいです」
B(買主):「条件が合えばすぐにでも買いたいです」
S(営業):「では、私が間に入り調整しますので安心してお任せください」
売主も買主も「一人の営業がまとめてくれた」と安心する一方で、営業は両手仲介に成功。これが現場の典型的な流れです。
両手仲介のメリットとデメリット
メリット(業者側)
* 手数料が片手の倍になる
* 取引全体をコントロールできるためスムーズに進む
メリット(売主・買主側)
* 一人の担当者が一気通貫でサポートしてくれる安心感
* 情報が一元化され、交渉がスピーディ
デメリット(売主・買主側)
* 営業が“どちらの利益を優先するか”不透明になりやすい
* 本来ならもっと高く売れた・もっと安く買えた可能性を逃すリスク
* 他社へ情報が回らず、市場での競争原理が働かない
法的な位置づけと注意点
両手仲介自体は宅地建物取引業法で禁止されていません。
ただし、問題になるのは「情報の囲い込み」と呼ばれる行為です。
本来、専任媒介契約を結んだ業者はレインズに物件を登録し、広く業者間で情報共有する義務があります。
しかし「両手仲介にしたい」という業者心理から、
* 他社の問い合わせを意図的に断る
* レインズに登録はしても詳細を非公開にする
といった不正が生じやすいのです。
これは宅建業法違反に当たる場合もあり、業界全体で問題視されています。
両手仲介を顧客にとってプラスにするには?
1. 情報開示を徹底する
売主・買主双方にとってのメリット・デメリットを説明し、透明性を担保する。
2. 価格の妥当性を第三者資料で示す
査定書や取引事例を提示し、「相手に有利すぎる条件ではない」と納得してもらう。
3. 交渉を中立的に進める
業者の利益ではなく、売主・買主双方の満足を優先する姿勢が信頼につながる。
まとめ─両手仲介は業者の“夢”か、それとも“落とし穴”か
「両手仲介(ダブルブローカー)」は、不動産業者にとっては一度に大きな収益を得られる魅力的な仕組みです。
一方で、売主や買主からすると「情報が囲い込まれて、本当に公平な取引がされたのか」という不安が残る手法でもあります。
つまり、両手仲介は「業者の利益」と「顧客の利益」をどう調和させるかが試される場面。透明性を確保し、三方良しの取引を実現できるかどうかが、営業担当者の腕の見せ所なのです。

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