未登記家屋の扱いと注意点
空き家相続の現場で、意外と多くの人が直面するのが「未登記家屋(みとうきかおく)」という存在です。
「え? 家って全部ちゃんと登記されてるんじゃないの?」
「住んでたのに、登記されてないなんてあるの?」
……と思う方も多いかもしれませんが、実際には全国で数百万戸の未登記家屋が存在すると言われています。
特に昭和以前に建てられた家や、田舎の古民家ではよくある話なんです。
そもそも、なぜ未登記になるの?
① 昔は登記が義務じゃなかった
現在は建物を新築すると登記申請が義務になっていますが、昭和30〜40年代以前は、登記は「任意」扱い。
つまり、登記をしなくても家を建てて住むことはできたんです。
そのため、特に地方では
「登記って面倒そうだからやらなかった」
「どうせ親族の土地だし、必要ないと思った」
といった理由で、最初から未登記のままという家がたくさんあります。
② 増築・リフォーム部分だけ未登記
家の一部を後から増築した場合、増築部分だけ未登記になっているケースもよくあります。
例:昭和50年に建てた平屋 → 平成10年に2階部分を増築 → 2階部分が未登記のまま
こういった「一部だけ未登記」も相続時のトラブルの種になります。
③ 親が「面倒だから」と放置していた
「登記にはお金がかかる」「書類を集めるのが面倒」─そんな理由で、家があるのに登記されていないという状態が、意外と多く残っているのです。
️
未登記家屋だと、何が問題なの?
一見、家が建って住めていれば問題なさそうに思えますが、登記されていない建物には大きなリスクがあります。
✘ 売却できない・担保にできない
不動産の取引は、「登記簿に載っている情報」をもとに行われます。 つまり、登記がない家は「法律上、存在しない」扱いになります。
l 売却しようとしても買い手がつかない
l 銀行の住宅ローン審査が通らない
l 補助金や減税制度が使えない
…など、あらゆる不動産手続きで支障が出てしまうのです。
✘ 相続登記がややこしくなる
建物の登記がなければ、相続時に「何を誰が受け継ぐのか」が証明しにくくなります。
そのため、相続登記をする際には…
l 建物があることを示す写真や固定資産税課税台帳
l 土地家屋調査士による現況調査
l 昔の図面や工事契約書などの資料
といった、余計な書類や手続きが必要になります。
✘ 税金だけはしっかりかかる
ややこしいのがこれ。 登記されていなくても、建物があれば市町村は固定資産税を課税します。
つまり…
l 法務局には登記されていない
でも、市役所では「課税対象」として扱われているという“二重構造”が発生しているのです。
書類上は「ない」ことになっているのにお金(税金)だけは「ある」として扱われる
これは相続人にとって非常に悩ましい問題です。
l 未登記家屋への対処法
未登記家屋を相続したときは、以下のステップで対応するのが基本です。
① 建物登記を行う
まずは、建物の登記簿が存在するかを確認しましょう。
存在しなければ、新たに「表題登記(ひょうだいとうき)」という登記を申請
これは土地家屋調査士という専門家に依頼して測量・調査を行います
この「表題登記」を済ませた上で、相続による所有権移転登記を行います。
② 固定資産台帳と照合する
市役所にある固定資産税課税台帳で、「未登記建物が課税されているか」を確認します。
l 家屋番号や面積、築年数をチェック
l 登記情報と突き合わせて、内容に齟齬がないかを確認
これにより、税金の申告や各種手続きもスムーズに進められます。
③ 専門家に早めに相談する
放置すればするほど、昔の資料(建築確認書、契約書、図面など)は失われ、証明が困難になります。
l 土地家屋調査士:表題登記の専門家
l 司法書士:相続登記の専門家
l 行政書士:戸籍・協議書の収集支援
それぞれの専門家の力を借りながら、早期解決を目指すことがポイントです。
ケーススタディ
:Jさんの場合
山形市で実家を相続したJさん。
古い木造住宅を売却しようと不動産会社に相談したところ、「この建物、登記されていませんね」と言われて大パニック。
そこから土地家屋調査士に依頼し、現地測量と登記手続きを開始。
建築時の図面もなく、手続きは半年以上かかることに。
その間、せっかく現れた買い手からは「待てません」と断られ、売却の機会を逃してしまいました。
Jさんはこう語ります。
「未登記って、ただの“書類の話”かと思ってた。
でも、こんなに実生活に影響するとは思わなかった…」
まとめ
:未登記家屋は「気づいた時が動き時」
l 未登記家屋は「存在しないのに税金はかかる」という厄介な存在
l 放置しておくと、売却も相続手続きもすべてが滞る
l 相続時には「登記簿があるか?」の確認を必ず行う
l 必要なら土地家屋調査士や司法書士に早めに相談するのが鉄則
l 登記して初めて“価値ある不動産”になる

コメントをお書きください