増える「墓じまい」─継承者不足と心の揺れ
少子高齢化の波は、お墓のあり方にも影響を与えています。
かつては「長男が墓を継ぐ」が当たり前でしたが、今は単身世帯や子どものいない夫婦、都市部へ移住して戻らない子どもたちが増え、「お墓を継ぐ人がいない」現実が各地で起きています。
管理者を失ったお墓は「無縁墓」となり、寺院や霊園が撤去・合葬することもあります。
厚生労働省によれば、2022年度の全国の改葬件数は過去最高の15万1,076件。
行政が撤去した無縁墓は3,651件にのぼります。
こうした背景から、「自分の代で墓を閉じる」という選択
─つまり「墓じまい」をする人が増えているのです。
- 子どもに負担をかけたくない─Aさんの決断
Aさん(66歳・仮名)は地方都市で一人暮らし。
息子は県外に就職し、結婚やUターンの予定もなし。
お墓は電車で30分ほどの寺にあり、管理費は年1万5,000円ほど。経済的には払えなくもない額です。
しかし、問題はお金よりも距離や将来の負担。
「自分がいなくなったあと、息子がどうするか悩むのはかわいそう」と思ったAさんは、永代供養墓の存在を知ります。
寺院や霊園が一定期間、または永続的に供養してくれるため、後継ぎは不要です。
調べて寺に相談し、墓石を撤去して祖父母、両親、夫の遺骨を永代供養墓へ移すことに決めました。
息子も同意し、改葬許可申請や石材店とのやり取りを経て、無事に完了。
しかし、残ったのは「寂しさ」
ところが、長年そこにあった墓石がなくなった跡地を見た瞬間、Aさんの胸に重いものが…。
永代供養墓は合同安置のため、自分だけの空間ではありません。
お盆に両親や夫と静かに向き合う時間も失われ、「これでよかったのか」と感じるようになったのです。
それでも「息子に迷惑をかけない」という安心感は確かにあります。
Aさんの心は、安堵と寂しさの間で揺れ続けています。
多様化する弔いの形
近年、終活を始める人は増加中。ある調査では、50〜79歳の44%がすでに終活を開始、33%が「今後予定」と回答。
弔いの形も多様化し、以下の選択肢があります。
- 永代供養墓:合同・個別型があり、後継ぎ不要
- 納骨堂:屋内型で天候に左右されず参拝可
- 手元供養:遺骨の一部を骨壷やアクセサリーで自宅保管
- 樹木葬・海洋散骨・宇宙葬・ダイヤモンド葬など、自然や記念品としての供養も可能
最後に
お墓は単なる石ではなく、思い出や家族とのつながりを形にするもの。
「管理不要の安心」を取るか、「故人と向き合える場所」を残すか
─その答えは人それぞれです。
お盆や法事の機会に、家族と一緒に「我が家のお墓」について話し合ってみてはいかがでしょうか。

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