近年は空き家の増加が社会問題になる一方で、少子高齢化などを背景に「住宅弱者(住宅確保が難しい人)」の問題も深刻化しています。
そこで国は2017年、空き家を活用して住宅弱者を支える仕組みとして「住宅セーフティネット制度」を整えました。(2025年改正)
空き家の利活用を検討している方に向けて、制度の概要、対象者、事例、課題を整理します。
■ 空き家で支援ができる「住宅弱者」とは
住宅弱者とは、事情により賃貸入居を断られやすい、住宅購入が難しい人を指します。
- 低所得者
- 高齢者
- 障がい者
- 生活保護受給者
加えて、差別や偏見により住まいが確保しにくいケースもあります。
・同性愛者
・外国籍
などが例として挙げられます。
住宅弱者が敬遠されやすい理由
- 家賃滞納リスクが高いと見なされがち
- 収入が不安定と判断されやすい
- 単身高齢者は「孤独死リスク」が懸念される
発見が遅れると事故物件扱いになる可能性
次の入居が決まりにくいという貸主側の不安
■ 住宅弱者が生まれる背景
空き家が増えているのに、住まいに困る人が出る背景には複数の構造要因があります。
公営住宅が足りない
・財政難で戸数を増やしにくい
・応募増で入居待ちが発生しやすい
高齢者世帯・一人親世帯の増加
・単身者が増えるほど住宅確保が不安定になりやすい
オーナー・不動産側の理解不足
・「トラブルになるのでは」
・「滞納するのでは」
という先入観が、入居拒否につながる
■ 空き家活用が支援につながる理由
空き家を制度的に活用できれば、次の効果が見込めます。
- 空き家の放置を防げる
- 住宅弱者の住まいを確保できる
- 孤立や健康悪化の予防につながる
- 貧困対策・福祉負担の軽減にもつながり得る
住宅弱者の問題は「一部の人の問題」ではなく、増えれば社会保障費や税負担にも影響しうるため、地域全体の課題とも言えます。
■ 住宅セーフティネット制度とは(2017年~)
国が空き家を活用し、住宅弱者(住宅確保要配慮者)を支えるために整えた制度です。
公営住宅だけでは対応しきれない現状の「補完策」として位置づけられています。
制度の柱は大きく3つ
- 入居を拒まない賃貸住宅の登録制度
- 登録住宅の改修支援・入居者への経済支援
- 居住支援(相談、保証などの支援体制)
空き家所有者にとってのポイント
- 空き家を「セーフティネット住宅」として登録できる
- 必要な改修がある場合、改修費の補助制度がある
- 入居者側の家賃補助がある場合もあり、貸主の不安を下げられる
- 居住支援法人・居住支援協議会が相談対応や家賃債務保証などを支援する
登録の流れ(イメージ)
- 都道府県・政令市・中核市などの登録窓口へ申請書提出
- 物件が基準を満たすか確認
- 必要に応じて改修→登録→募集・契約へ
■ 対象者と対象物件
制度では住宅弱者を「住宅確保要配慮者」と呼びます。
主な対象者
- 低所得者
- 被災者(災害から概ね3年以内など)
- 高齢者
- 障がい者
- 子育て世帯
※外国人など、地域事情により自治体が追加定義する場合もあります。
低所得者の目安
- 政令月収 おおむね15万8千円以下
対象物件の目安
- 耐震性など安全性が確保されている
- 居住面積がおおむね25㎡以上
など、安心して住める基準が設けられています。
■ 取り組み事例
● 東京都豊島区
「としま・まちごと福祉支援プロジェクト」
・空き家をセーフティネット住宅として整備
・空き店舗を活用してコミュニティ拠点を整備
・住まい提供だけでなく、孤立を防ぐ仕組みを組み込むのが特徴
■ 住宅弱者支援として空き家活用を進める課題
改修費の不足
・補助金はあっても上限があり、大規模改修だと足りないことがある
家賃設定の難しさ
・相場より低め設定が求められやすい
・入居者補助があっても、貸主の収益性やリスク評価が課題
工夫の方向性(例)
- シェアハウス化で収入の安定を図る
- 居住支援法人等と連携し、保証や見守り体制を組み込む
- 改修範囲を絞り、段階的に整備する
■ まとめ
・住宅弱者は、低所得者、高齢者、障がい者など「住まいの確保が難しい人」
・公営住宅不足や単身世帯増加、理解不足などが背景
・2017年の住宅セーフティネット制度で、空き家活用による支援が制度化
・登録制度、改修補助、家賃補助、居住支援体制が整っている
・一方で改修費と家賃収益性が課題になりやすい
空き家を「ただの負担」にせず、地域課題の解決に結び付ける選択肢として、セーフティネット住宅登録は検討価値があります。

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