人口減少の中で、県と市はどの方向へ進むべきか
山形のIターン・Uターンは、いま何が問題なのか
山形でIターン・Uターンを考えるとき、単に「移住者を増やす」という発想だけでは足りません。
本当に向き合うべきなのは、人口減少と若者流出の構造そのものです。
山形県の総人口は1996年以降減少が続き、2024年6月1日現在で約101.5万人とされています。
県の人口ビジョンでも、若年層の社会減、とくに女性の流出が大きな課題として示されています。
さらに、2024年3月の高校卒業者では、大学等進学者4,197人のうち県内進学は1,108人、県外進学は3,089人となっており、進学段階から県外流出が続いています。
つまり、Uターンを就職時だけの問題として考えるのではなく、進学、就職、結婚、子育てまで含めて捉える必要があります。
山形市も「県内中心都市だから安心」とは言えない
山形市は県内最大の都市ですが、人口面では決して安泰ではありません。
山形市の将来人口推計では、2020年247,590人から、2030年233,788人、2040年217,457人へと減少していく見通しです。
市の資料でも、20代前半の転出超過や、女性の流出傾向が課題として意識されています。
つまり山形市は、県内の中心であることに甘えるのではなく、若者や子育て世代から「住みたい」「戻りたい」と選ばれる理由を持つ必要があります。
県の立場から見た現状認識
県の担当者の立場から見ると、Iターン・Uターン政策の中心課題は、県全体としての人の流れをどう変えるかにあります。
県としては、まず県外へ進学した若者とのつながりを切らさないことが重要です。
実際、山形県はUIターン就職活動交通費助成や地方就職支援金などを行っていますが、補助制度だけで若者が戻るとは限りません。
大学在学中から県内企業との接点をつくり、インターンやオンライン交流を通じて「戻る道筋」を見せることが必要です。
あわせて、若年女性にとって働きやすく、暮らしやすい地域づくりも欠かせません。県人口ビジョンでも、若者・女性にとって魅力的な地域づくりが人口減少対策の中核に置かれています。
市の立場から見た現状認識
市の担当者の立場からは、山形市で暮らす具体的なメリットを、もっとはっきり示す必要があります。
山形市は、移住・定住・関係人口の拡大に向けて、移住相談件数の増加や、県外からの転入・転出差の改善を目標に掲げ、広告配信、移住体験、企業誘致、起業支援などを進めてきました。
移住相談件数については年間115件から400件を目標としていました。
こうした施策は入口として大切ですが、これからは「来てもらう」だけでなく、「住み続けてもらう」都市づくりが問われます。
仕事、住宅、子育て、交通、生活利便性、まちなかの魅力を一体で整えていく必要があります。
これから5年で重点的に進めるべきこと
今後5年で目指すべきなのは、まず転出超過を小さくすることです。
県の立場では、県外進学者との継続的な接点づくり、地元企業の魅力発信、Uターン就職の導線強化が重要になります。
また、Iターン希望者に対しても、「自然が豊か」「子育てしやすい」だけではなく、「仕事がある」「キャリアが切れない」「副業やテレワークにも対応できる」という面を打ち出す必要があります。
市の立場では、実際に暮らす場としての魅力を磨くことが求められます。
子育て支援、住宅施策、通勤のしやすさ、中心市街地の居住環境、デジタル人材や起業人材の受け皿づくりなどを、移住定住政策と一体で進めるべきです。
10年後に向けて山形はどの方向を目指すべきか
10年後を見据えるなら、山形は「移住促進県」ではなく、「人が循環する地域」を目指すべきです。
県は、若者が一度外へ出ても戻ってこられる「戻ってくる山形」を設計する必要があります。
進学や就職で外に出ること自体は止められなくても、外に出た若者が山形とのつながりを持ち続け、数年後に戻る選択ができるようにすることは可能です。
一方、市は「住み続けられる山形市」を実装する必要があります。
移住イベントで呼び込むだけではなく、戻ってきた人や新たに移住した人が、仕事を続け、家庭を築き、地域に根づける都市をつくることが大切です。
つまり、県は広域的に人の流れを設計し、市は生活と仕事の受け皿を整える。この役割分担がかみ合ってこそ、Iターン・Uターン政策は本当の人口対策になります。
まとめ
山形のIターン・Uターン政策は、これからの5年、10年で発想の転換が必要です。
単なる移住促進ではなく、若者や女性が「ここで暮らしたい」「戻っても大丈夫」と思える地域をつくることが本質です。
県は人材循環の仕組みを広く設計し、市は仕事と暮らしの魅力を具体化する。
この二つが連動したとき、はじめて山形のIターン・Uターンは、人口減少の流れに対抗できる政策になるはずです。

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