オーナー借入金を使って株価をやさしくコントロール
〜「資本注入」より「貸付」で会社を助ける方が、節税にも承継にも効く〜
中小企業では、経営者が自ら会社に資金を入れる場面が多くあります。
しかしその資金、「出資」ではなく「貸付」にするかで、税務上の扱いは大きく変わります。
実は「オーナー借入金(役員貸付金)」として処理すれば、会社の負債として認識され、純資産が減るため、自社株評価を自然に抑えることができるのです。
一方、同じ金額を増資として入れれば、純資産が増えて株価は上昇します。
つまり、経営支援と節税を両立する設計が可能です。
・仕組み:オーナーが会社に貸す「裏方の資本調整」
- 経営者が会社へ資金を貸し付ける(銀行振込などで実行)。
- 会計上は「役員借入金(負債)」として処理。
- 貸付金がある限り、会社の純資産(=株主価値)は減少。
- 自社株評価は純資産価額法で下がるため、相続・贈与時の評価額が低くなる。
- 返済は会社の資金余裕ができたタイミングで可能。
返済原資は課税済み利益からの支出なので、法人税の追加負担はない。
・税務上の位置づけ(合法の条件)
実態のある貸付であること。
→ 契約書・返済計画・利息設定(年0.1〜1.0%程度でも可)を明示。
金銭の流れが明確であること。
→ 銀行振込記録・会計仕訳・返済履歴を整備。
返済の意思・能力があること。
→ 無期限・無利息・返済不能状態だと“実質出資と判断される恐れ。
これらを満たしていれば、税務上も完全に合法です。
・実務メリット
- 株価評価の抑制 負債が増えるため、純資産ベースでの自社株価が下がる。
- 資金繰りの柔軟性 返済期限や金利を自社判断で設定できる(銀行より柔軟)。
- 経営者の資金保全 出資ではなく貸付なので、倒産時も債権者として返還請求権が残る。
- 将来の承継準備に連動 相続時には、この貸付金を相続財産として扱うことで、遺産分割・債権債務整理がしやすい。
・注意点(やりすぎは逆効果)
無期限・無利息は危険:
経済合理性がないと、寄附金扱いまたは資本認定される。
返済不能企業はリスク:
会社が実質的に債務超過であれば、貸倒れ扱いとなり損失処理は限定的。
帳簿上のみの貸付はNG:
現金移動がないまま仕訳だけ入れると、即否認対象。
過大な貸付残高は、金融機関の評価(格付)を下げる恐れ。
・安全な運用ステップ
- 金銭消費貸借契約書を作成(契約金額・利率・返済条件を明記)
- 銀行振込で資金移動を実行し、記録を残す。
- 会計仕訳:「借方:現金 貸方:役員借入金」。
- 毎期末に利息計上・支払い実績を管理。
- 返済計画表をExcelで更新(3年ごとに見直し)。
- 税理士に貸付残高の評価影響を確認(株価算定表の修正)。
・チェックリスト
- オーナー借入金契約書を正式に作成し、日付・金額・利率を明示しているか。
- 資金移動(銀行振込記録)を保存しているか。
- 返済予定表をExcelで作り、年度ごとに更新しているか。
- 利息を毎年処理しているか(未払い利息が累積していないか)。
- 税理士が「実質出資でない」と判断しているか(意見書あり)。
- 貸付金残高を含めた株価評価表を確認しているか。
- 金融機関への説明資料を整備しているか(融資審査時の誤解防止)。
・まとめ
オーナー借入金は「資金を貸すことで会社を支え、同時に株価も調整する」知的な節税策です。
決算書上の見た目を変えるだけでなく、資金の流れを正しく設計すれば、完全に合法で説明可能。
節税とは“資本を動かす技術。
オーナー借入金は、最もシンプルで安全な「資本デザイン」です。

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