実家を貸すなら「定期借家」と「普通借家」どっち?
あとで困らないために知っておきたい契約の大きな違い
相続した実家や空き家を貸そうと考えたとき、意外と大事なのに分かりにくいのが、「定期借家」と「普通借家」の違いです。
一般の方にとっては、どちらも「家を貸す契約」に見えるかもしれません。
でも、実際にはこの二つは、契約が終わるときの考え方がかなり違います。
まず大きな違いをひと言でいうと、普通借家は、貸主の都合だけでは終わりにしにくい契約定期借家は、期間が来ればいったん終わる契約です。
国土交通省も、普通建物賃貸借では賃貸人は正当事由がない限り更新拒絶ができない一方、定期建物賃貸借は契約で定めた期間の満了により、更新されることなく確定的に終了する制度だと説明しています。
この違いは、「とりあえず空き家を貸してみたい」「将来は子どもが戻るかもしれない」「数年後に売る可能性もある」といった方にとって、とても大きな意味を持ちます。
実例 「しばらくだけ貸したい」と考えていたケース
たとえば山形で、親から相続した実家を持っている方がいたとします。
今すぐ売る気持ちにはなれない。
でも空き家のまま置いておくのももったいない。
そこで、「数年だけ貸して、その後どうするか考えたい」と思いました。
このとき、何も意識せず普通借家で貸してしまうと、貸主が「そろそろ家を戻したい」「子どもが住むことになった」「売却したい」と思っても、すぐに契約を終わらせられるとは限りません。
普通借家は、借主の居住の安定が重く見られる契約だからです。
国土交通省のQ&Aでも、普通借家では正当事由がない限り賃貸人から更新拒絶はできないとされています。
一方、最初から定期借家で契約しておけば、契約期間満了でいったん終了する前提がはっきりします。
もちろん、双方が合意すれば再契約はできますが、「一定期間だけ貸したい」という貸主の考えには合わせやすいです。
国土交通省も、定期建物賃貸借は期間満了で終了するが、双方が合意すれば改めて再契約できると案内しています。
普通借家は、長く安定して住んでもらいやすい契約です
普通借家の特徴は、借主にとって住み続けやすいことです。
契約期間が来ても、自動的にきっぱり終わるわけではありません。
そのため、借主からすると安心感があります。
家族で長く住みたい人や、できるだけ引っ越しの不安を少なくしたい人には、普通借家のほうがなじみやすいです。
貸主側から見ても、「長く安定して住んでもらいたい」「当面は自分で使う予定がない」という場合には、普通借家のほうが自然なこともあります。
つまり、普通借家は長く貸すつもりの家と相性がよい契約だと考えると分かりやすいです。
ただしその分、貸主が後から「やっぱり返してほしい」と思っても、簡単にはいかないことがあります。
ここを軽く考えると、後で「こんなはずではなかった」となりやすいです。
定期借家は、期間を区切って貸しやすい契約です
定期借家の特徴は、期間を区切って貸しやすいことです。
国土交通省は、定期建物賃貸借について、契約で定めた期間が満了することにより、更新されることなく確定的に契約が終了する制度だと説明しています。
これは、「転勤中だけ貸したい」「将来、自分や子どもが戻る可能性がある」「数年後に売却を考えている」といった家に向いています。
相続した実家でも、今すぐ売らずに一時的に活用したい場合には、定期借家の考え方が合うことがあります。
ただし、定期借家は普通借家より借主が見つかりにくくなることもあります。
なぜなら、借りる側から見ると「期間が来たら出なければいけないかもしれない」という不安があるからです。
つまり、貸主には使いやすい一方で、借主には選ばれにくくなる面もあります。
定期借家は「書面」と「事前説明」が大事です
定期借家は、普通借家と比べて契約の作り方にも注意が必要です。
国土交通省の資料では、定期借家制度では書面により契約書を作成する必要があり、さらに賃貸人は賃借人に対して「更新がなく、期間満了により終了する」旨を契約書とは別に、あらかじめ書面を交付して説明する必要があるとされています。
つまり、「口頭で“今回は2年だけね”と言っておけばよい」というものではありません。
ここがあいまいだと、後で「普通借家だと思っていた」という行き違いになりかねません。
定期借家を考えるなら、契約の形式そのものをきちんと整えることがとても大切です。
この点は、普通借家以上に注意が必要なところです。
どちらが向いているかは「将来その家をどうしたいか」で決まります。
定期借家と普通借家、どちらがよいかは、一概には言えません。
大事なのは、将来その家をどうしたいかです。
普通借家が向きやすいのは、
・当面は長く貸したい
・自分で使う予定がない
・安定して入居してもらいたいという場合です。
定期借家が向きやすいのは、
・一定期間だけ貸したい
・将来自分や家族が使う可能性がある
・売却の時期を見ながら活用したいという場合です。
つまり、今貸せるかだけでなく、数年後にどうなっていてほしいかから逆算して考えるのが大切です。
一番よくないのは「何となく普通借家で貸す」こと
空き家の賃貸で一番避けたいのは、契約の違いをあまり意識しないまま、何となく普通借家で貸してしまうことです。
最初は「とりあえず借りてもらえればいい」と思っていても、後から「やっぱり家を戻したい」「売りたい」「家族で使いたい」となることは十分あります。
そのときに、普通借家か定期借家かで、動きやすさはかなり違ってきます。
だからこそ、貸す前の段階でこの家は長く貸す家なのか、期間を区切って貸す家なのかを考えておくことが大切なのです。
まとめ
定期借家と普通借家のいちばん大きな違いは、契約期間が終わったときにどうなるかです。
普通借家は、貸主の都合だけでは終わりにしにくく、借主が住み続けやすい契約です。
定期借家は、契約で決めた期間の満了で終了する前提の契約です。
そのため、長く安定して貸したいなら普通借家期間を区切って貸したいなら定期借家という考え方が基本になります。
相続した実家や空き家は、将来どうするかがまだ決まっていないことも多いです。
だからこそ、家賃や入居者探しだけでなく、契約の形をどうするかまで最初に考えることが大切です。
貸すときは、借りてくれる人が見つくことばかりに気持ちが向きがちです。
でも本当に大事なのは、借りた後も困らない形になっているかです。
定期借家と普通借家の違いを知っておくだけでも、空き家の貸し方はかなり考えやすくなると思います。

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