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会社員と自営業では、就業不能の怖さがまるで違う。

 会社員と自営業では、就業不能の怖さがまるで違う。

 

 「死亡保障は考えているけれど、働けなくなった時のことまでは考えていない」という方は少なくありません。

 けれども実務では、死亡よりも「長く働けなくなること」の方が家計に与える打撃が大きい場面がよくあります。

 特に見落とされやすいのが、会社員と自営業では、働けなくなった時に使える公的制度がかなり違うという点です。

 会社員には、健康保険の被保険者であることなどの要件を満たせば、傷病手当金という仕組みがあります。

 業務外の病気やけがで働けず、連続する3日を含み4日以上仕事に就けず、給与の支払いがないか減額されている場合などに支給対象となり、申請権には2年の時効があります。

 つまり、一定期間は公的制度で生活の一部を支えてもらえる可能性があります。

 

 一方で、自営業者やフリーランスは、同じように体調を崩して働けなくなっても、会社員ほどの所得補填がありません。

 国民健康保険には、一般に傷病手当金が広く用意されているわけではなく、自治体や特例によって事情が異なるものの、少なくとも「会社員と同じ前提」で考えるのは危険です。

 そこで、就業不能保険や所得補償保険の必要性がぐっと高まります。

 これは単に不安だからではなく、制度上の支えが薄いからです。

 

 実例で考えてみます。会社員のAさんは、椎間板ヘルニアで手術し、しばらく休職しました。

 収入は減ったものの、傷病手当金で生活費の一部をつなぐことができ、住宅ローンや教育費は何とか回りました。

 ところが、自営業のBさんが同じように腰を痛めて数か月動けなくなると、売上は止まり、固定費だけが毎月出ていきます。

 事務所家賃、借入返済、車両費、通信費などは待ってくれません。

 しかも、自営業は「働けない=収入ゼロ」に直結しやすく、会社員以上に精神的な負担も大きくなります。

 

 ここで大切なのは、就業不能保険に入れば安心という単純な話ではないことです。

 保険商品によっては、精神疾患の扱いが弱かったり、「所定の状態」が厳しかったり、短期間では支払対象にならなかったりします。

 つまり、会社員か自営業かという違いに加え、保険そのものの条件も見なければなりません。

 けれども少なくとも、「会社員と自営業で必要性が同じ」という考え方は、現実にはかなり危ないのです。

 

 また、家計設計の視点で見ると、会社員は公的制度を踏まえて不足分を民間保険で埋める、自営業は公的制度が弱い前提で厚めに考える、という発想が基本になります。

 ところが現実には逆転していることもあります。

 会社員が不安で就業不能保障を厚く持ち、自営業者が「医療保険だけ入っているから大丈夫」と思っているようなケースです。

 これは、制度を知らないために起こる典型的なずれです。

 

 就業不能は、見た目には地味ですが、家計をじわじわ壊すリスクです。

 死亡保障のように一度で話が終わらず、生活費が毎月かかり続けるからです。

 働けなくなった時に何が残るのか。会社員か、自営業か。

 ここを分けて考えることが、就業不能対策の出発点です。