認知症になってからでは、保険の整理は急に難しくなる。
保険の見直しは、「保険料が高いと感じた時」や「新しい商品を勧められた時」にするものと思われがちです。
けれども高齢の親の保険については、もっと別の理由で早めの確認が必要です。
それが、認知症や判断能力の低下です。
保険契約は紙一枚に見えても、実際には内容確認、意思表示、変更手続きが必要になる場面が多く、本人の判断能力が大きく関わります。
高齢になると、若い頃から入り続けている保険、退職後に勧められた保険、医療保険、終身保険、個人年金など、契約の本数が増えていることがあります。
しかも、保険会社名や証券の保管場所を本人しか知らないことも珍しくありません。
元気なうちはそれでも何とかなるのですが、認知症が進み始めると、一気に見通しが悪くなります。
家族が「何か保険があったはず」と思っても、どこの会社に、どんな契約が、何本あるのか分からないのです。
実例として、80代の親が複数の保険に入っていたものの、本人しか内容を把握しておらず、物忘れが進んでから子どもが証券を探し始めたケースがあります。
引き出しや金庫、古い通帳を調べても全体像が見えず、保険料の引落口座を見て初めて契約会社を探るような状態でした。
その間にも、不要な契約は続き、必要な請求は止まり、家族の負担だけが増えていきます。
「もっと早く一緒に見ておけばよかった」という言葉が、こうした場面では本当によく出ます。
認知症が進んだ後でも、まったく何もできないわけではありません。
成年後見制度など別の仕組みを検討する余地はあります。
ただし、後見が必要になると手続きは重くなり、時間も費用もかかりますし、「保険だけ整理したい」という軽い気持ちでは済みません。
つまり、元気なうちなら簡単だった確認や変更が、後になると急に大仕事になるのです。
ここで大事なのは、保険整理を「縁起でもない話」にしないことです。
相続の話や老後の話は避けたくなるものですが、保険に限っていえば、元気なうちの整理は本人を守ることでもあります。
不要な保険料の流出を防ぎ、必要な保険だけを残し、家族が請求できる状態にしておく。
これは相続対策というより、暮らしの整理に近い作業です。
また、高齢の親世代は、「昔入ったからよく分からないけれどそのまま」「勧められて断れずに入った」という契約も少なくありません。
医療保険が何本も重なっていたり、受取人がすでに亡くなった配偶者のままだったりすることもあります。
こうした問題は、本人が元気なうちなら話し合いで整理できますが、判断力が落ちてからでは進みにくくなります。
保険整理は、相続が起きてから始める作業ではありません。
高齢の親の保険は、“まだ元気だから後で”ではなく、“今なら一緒に確認できる”うちに見える化しておくことが、一番やさしくて現実的な対策です。

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