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 拘禁刑が始まりました。「懲役」と「禁錮」がなくなって、何が変わったのか。

 拘禁刑が始まりました。

 「懲役」と「禁錮」がなくなって、何が変わったのか。

 

 2025年6月1日から、刑法の大きな改正として、懲役と禁錮が廃止され、新しく「拘禁刑」に一本化されました。

 これは、明治40年に刑法が施行されて以来、刑罰の種類そのものを見直す大きな変更です。

 法務省は、この改正の目的を、受刑者一人ひとりの特性に応じたきめ細かな処遇を行い、改善更生と円滑な社会復帰を図ること だと説明しています。 

 

 昔の刑法では、ざっくり言うと、

 懲役=刑務所に収容し、所定の作業を行わせる刑

 禁錮=刑務所に収容するが、作業は刑の本質的要素ではない刑

という分かれ方でした。

 ところが現実には、受刑者の高齢化、障害、依存症、精神的な課題などが複雑になり、「一律に作業中心」で更生を進めるには限界が出てきました。

 法務省の資料でも、懲役では作業に一定時間を割かなければならず、必要な指導等の時間確保が難しい場合があること、禁錮では改善更生に必要な処遇が十分組みにくい場合があることが、改正の背景として示されています。 

 

 ここで、身近なイメージで考えてみましょう。

 たとえば、Aさんは比較的若く、就労経験も乏しく、出所後に仕事を続ける力をつけることが再犯防止に直結するタイプだとします。

 こうした人には、刑務作業や職業訓練をしっかり組み込み、生活リズムや就労意識を整えることが有効かもしれません。

 一方で、Bさんは高齢で、身体機能の低下や認知機能の問題があり、無理に作業を中心に据えるより、生活指導、福祉との接続、医療的な支援を重ねたほうが再出発につながるかもしれません。

 また、Cさんが薬物依存やアルコール依存の課題を抱えているなら、単に作業をさせるだけでは不十分で、依存回復のための指導や支援が重要になります。

 

 今回の拘禁刑は、こうした違いに応じて、必要な作業を行わせたり、必要な指導を行ったりできる 仕組みに変えた点が大きいのです。

 法務省は、拘禁刑の下では、受刑者の年齢、資質、環境などに応じて処遇を組み、改善更生を進めると説明しています。 

 

 つまり、今回の改正は「刑を軽くした」という話ではありません。

 むしろ、同じ施設に入れて同じことをさせる発想から、再犯防止に必要な処遇を個別に組み立てる発想へ変えた と見るほうが実態に近いのです。

 法務省矯正局も、拘禁刑創設によって、全ての受刑者に一律に作業を行わせるのではなく、特性に応じた処遇を実施できるようになるとしています。 

 

 一般の方が誤解しやすいのは、「懲役がなくなったなら、厳しさが下がったのか」という点です。

 ですが、そう単純ではありません。

 拘禁刑も自由を奪う重い刑罰であることは変わりません。

 その上で、受刑者ごとに、

  • 作業を重視するのか
  • 指導を重視するのか
  • 医療・福祉的支援を厚くするのか

を柔軟に組み合わせやすくした、というのがポイントです。 

 

 この改正の根っこにあるのは、「刑務所に入れたら終わり」ではなく、出たあとにどう社会へ戻すか です。

 再犯が減らなければ、本人にとっても社会にとっても損失が続きます。

 だからこそ、罰するだけでなく、立て直しに必要な処遇へ時間を振り向けやすくしたのが拘禁刑だと理解するとわかりやすいでしょう。

 参議院法制局も、近年の再犯者割合の上昇傾向などを背景に、改善更生・再犯防止の必要性が高まっていたことを改正理由の一つとして説明しています。

 

 要するに、今回の改正は、

「懲役と禁錮の名前を変えた」だけではなく、受刑者を一律に扱う時代から、課題に応じて処遇を組み替える時代へ進んだ改正 です。

 刑罰の重さはそのままに、社会復帰の現実に合わせて中身を調整しやすくした。そこに、拘禁刑創設の一番大きな意味があります。