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在庫評価の見直し「棚卸しの数字」で、税金を動かす

   在庫評価の見直し

    ―「棚卸しの数字」で、税金を動かす―

 

 多くの中小企業で、毎年の決算時にこうした声を耳にします。

 「利益は出ているのに、現金が残らない」「倉庫には商品が山積みなのに、税金は増えている」

 その原因の一つが、“在庫の評価方法です。

 在庫とは、まだ売れていない商品や原材料。実際にお金になっていないにもかかわらず、決算上は「資産」として扱われ、利益を押し上げる要因になります。

 つまり、在庫を高く評価すれば利益が増え、低く評価すれば利益が減る。

 この「評価方法」こそ、合法的な節税のカギなのです。

 

🔹低価法とは

 在庫の評価方法には「原価法」と「低価法」があります。

  • 原価法:仕入価格そのままで評価(一般的)
  • 低価法:時価が下がった場合、原価より低い価額で評価できる

 たとえば、100万円で仕入れた商品が、販売不振で市場価値70万円になっていた場合。

 原価法なら在庫評価100万円、低価法なら70万円。

 差額の30万円は「評価損」として損金に算入できるため、その分、課税所得を減らす=節税になります。

 特に、在庫を多く抱える業種(製造・小売・建設資材など)では、この評価見直しが直接、法人税の軽減につながります。

 

🔹減耗償却とは

 在庫や原材料の中には、時間の経過や環境条件で価値が減るものがあります。

 たとえば、

  •  長期保管で品質が劣化した原材料
  •  モデルチェンジで旧型になった製品
  •  販売計画から外れた在庫品

 これらを実際の減耗分だけ損金処理できるのが「減耗償却」です。

 現場の棚卸し時に「破損・劣化・使用不能」などの在庫を丁寧にチェックし、適切な評価減を行うことで、実態に即した節税が可能になります。

 

🔹ケーススタディ:

 山形の機械販売業L社

 L社では、コロナ禍の影響で販売が落ち込み、前年から倉庫に残っていた機械部品の在庫額が1,000万円に。

 しかし、半数以上が旧型で売却困難になっており、顧問税理士の助言で低価法を採用。

 実際の評価額を600万円に見直し、差額400万円を評価損として損金処理。

 結果、法人税が約120万円軽減されました。さらに、在庫圧縮を契機に物流管理を見直し、翌期のキャッシュフローも改善。

 「在庫を整理しただけで、会社の数字が健全化した」と社長も納得の節税でした。

 

🔹在庫評価の見直し手順

  1.  棚卸しの実施:期末在庫の現物確認
  2.  陳腐化・劣化在庫の抽出:販売見込みや品質をチェック
  3.  評価額の算定:原価・時価・再取得価格を比較
  4.  会計処理:評価損を損金算入(低価法適用)

 ここで重要なのは、「一時的な利益操作」と誤解されないよう、合理的な根拠(在庫リスト・写真・市場価格資料など)を残しておくこと。

 

🔹注意点

  •  低価法は「継続適用」が原則。毎期の評価方法を変えると否認される可能性あり。
  •  市場価値を判断する際は、仕入先やオークション価格など客観的資料を用意。
  •  減耗償却は実際の損耗が確認できるものに限る。

 また、在庫を意図的に過少評価する行為は脱税となるため、「実態に即した評価」を徹底することが信頼を守るポイントです。

 

🔹まとめ:

 「在庫管理は“税務戦略の第一歩」

 在庫は単なるモノではなく、「税金を動かす数字」です。

 決算書の棚卸し額を見直すだけで、現金支出を伴わずに利益をコントロールできる。

 特に中小企業では、在庫評価の工夫がそのまま資金繰り改善に直結します。

 節税の目的は“数字を小さくすることではなく、会社を長く続けるための体力を残すこと。 

 そのために、在庫という「見えない税金」を賢く扱うことが大切です。