役員報酬の最適化
―“もらい方ひとつで、会社の税金は変わる―
「社長の給料をどうするか」。
これは単なる給与の話ではなく、法人税と所得税を同時に動かすスイッチです。
役員報酬の設定を誤ると、法人税を多く払いすぎたり、逆に税務署に「否認」されるリスクもあります。
しかし、ポイントを押さえれば、合法的に税負担を圧縮し、キャッシュを残すことが可能です。
🔹基本ルール:「定期同額給与」
まず、役員報酬は原則として「毎月同額」で支払う必要があります。
これを定期同額給与といい、法人税法第34条で定められています。
なぜか?
役員報酬は経営者の裁量で決められるため、自由に増減できてしまうと“利益調整の道具になってしまうからです。
したがって、
期首から3か月以内に決定
その後は同額を支給(賞与扱いに注意)が原則ルールです。
ただし、例外として「業績連動給与」「臨時改定事由」が認められる場合もあります。
🔹法人税と所得税のバランスを取る
役員報酬を増やせば法人の経費が増え、法人税は下がる。
しかしその分、社長個人の所得税が増えます。
逆に役員報酬を減らせば法人税は増え、個人の税負担は軽くなります。
つまり、会社と個人の税負担をトータルで最適化するのがポイント。
例えば、法人税率30%、所得税・住民税率50%の場合:
|
報酬額 |
法人税 |
所得税 |
合計税負担 |
|
800万円 |
約90万円 |
約200万円 |
約290万円 |
|
1,200万円 |
約60万円 |
約350万円 |
約410万円 |
このように、報酬を上げすぎても下げすぎても不利。
「会社に残す vs 個人に残す」の最適バランスが鍵です。
賞与や退職金との組み合わせで節税効果UP
役員賞与は原則損金不算入ですが、「事前確定届出給与」として税務署に届出すれば損金化が可能。
役員退職金は、長年の功績に対する支払いとして認められ、個人側では「退職所得」として1/2課税になるため、極めて有利。
つまり、「現役時はほどほどの報酬」「退任時に退職金で調整」という戦略が最も効果的です。
🔹ケーススタディ:山形の建設業K社
K社の社長は、役員報酬を毎月80万円に設定していましたが、顧問税理士の助言で60万円に変更し、浮いた20万円を会社に留保。
さらに退職金制度を設け、15年後の退職時に1,500万円を支給予定としました。
この退職金は「退職所得控除+1/2課税」で、実質的な税率は約10%。
結果、法人税を毎年30万円削減し、将来の個人課税も軽く抑えられる形に。
「報酬を減らしたのに、最終的に手取りが増える」
─まさに設計勝ちの例です。
🔹注意点
- 期中での報酬変更は原則不可(特別な事情がない限り損金否認)。
- 役員報酬を「賞与扱い」にすると、法人税の損金にできない。
- 業績連動給与を採用する場合は、上場企業並みの算定根拠が必要。
- 税務署は「実態の伴わない節税目的の変更」を厳しく監視。
また、役員報酬の額を決める際には、同業他社の水準や会社規模に見合った妥当性も重視されます。
🔹まとめ:
「社長の給料=会社のバランスシート」
役員報酬の最適化とは、節税だけでなく会社経営のバランス調整です。
報酬を下げて法人税を減らすだけでは、社員や銀行の信頼を損ねる。
逆に高すぎれば個人の税負担が重くなる。
重要なのは、“会社の成長・資金繰り・退職後の設計を一体で考えること。
社長の報酬は、「数字の調整」ではなく「経営判断」です。
これを理解している経営者は、どんな景気でも会社を強くします。

コメントをお書きください