【相続税が大きく変わることも】
本当に大事なのは「遺産をどう分けるか」
相続税対策というと、「不動産を買う」「アパートを建てる」「生前贈与をする」といった方法を思い浮かべる方が多いかもしれません。
もちろん、そうした方法が有効な場面もあります。
けれども、相続税を考えるうえで、まず最初に見ておきたいのは、亡くなったときに遺産をどう分けるかです。
実は、同じ財産でも、誰が何を相続するかによって、使える特例や税額軽減が変わり、相続税の負担にかなり差が出ることがあります。
国税庁も、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など、取得する人や分け方によって税額に影響する制度を案内しています。
この「分け方」が大事な理由は、特別な資産を新たに買わなくても始められるからです。
相続税対策というと、お金のある人だけの話に見えがちですが、遺産の分け方を考えること自体は、多くのご家庭でできる現実的な準備です。
しかも、税金だけでなく、相続後のもめごとを防ぐことにもつながります。
誰がどの財産を受け継ぐのかを事前に話し合っておくことは、節税と円満相続の両方に役立つ、非常に実務的な対策といえます。
これは「最強」と言い切るより、まず最初に考えるべき基本対策と表現したほうが、実態に近いでしょう。
特に重要なのが、自宅を誰が相続するかです。
亡くなった方が住んでいた土地については、一定の要件を満たすと「小規模宅地等の特例」が使えることがあります。
この特例が適用できると、居住用の宅地は一定面積まで評価額を大きく減らせるため、相続税の負担に与える影響は非常に大きくなります。
国税庁のタックスアンサーでも、居住用宅地については一定の条件のもとで330㎡まで80%減額される仕組みが示されています。
土地の評価額が高い地域はもちろん、地方でも敷地が広い自宅では影響が小さくありません。
ここで注意したいのは、「自宅はとりあえず子どもに相続させればよい」とは限らないことです。
たとえば、配偶者がそのまま自宅に住み続ける予定なのに、最初から遠方の子どもが取得する形にしてしまうと、状況によっては使えたはずの特例が使えず、相続税が高くなることがあります。
逆に、配偶者や一定の同居親族が取得することで、特例を活かせる場合もあります。
見た目には自然な分け方でも、税務上は不利になることがあるため、感覚だけで決めないことが大切です。
さらに見落としやすいのが、配偶者の税額軽減です。
配偶者が相続する財産については、一定の範囲まで相続税が大きく軽減される制度があります。
国税庁は、配偶者が取得した財産について、原則として1億6,000万円まで、または法定相続分相当額までは配偶者に相続税がかからない仕組みを案内しています。
そのため、一次相続だけを見ると、配偶者が多く相続したほうが税金を抑えやすいことがあります。
ただし、ここで終わらないのが相続の難しいところです。
配偶者に多く集めれば一次相続では有利でも、その後に配偶者が亡くなったときの二次相続で、子どもたちの税負担が重くなることがあります。
つまり、相続税対策は一回分だけ見て決めるのではなく、家族全体で二回の相続を通してどうなるかを見ることが大切です。目先の節税だけで判断すると、あとで不動産の分け方に困ったり、納税資金が足りなくなったりすることもあります。
また、遺産分割が申告期限までにまとまらない場合にも注意が必要です。
相続税の申告と納税は、原則として被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
分割協議が終わっていないからといって、申告期限が延びるわけではありません。
そして未分割のまま申告すると、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減が使えない形での申告になるのが原則です。
あとで分割がまとまれば修正や更正の請求はできますが、最初から見通しを立てておくほうが、資金面でも気持ちの面でも楽になります。
結局のところ、相続税対策で本当に大事なのは、「何を買うか」よりも「どう分けるか」を先に考えることです。
自宅は誰が取得するのか、配偶者の生活はどう守るのか、子どもたちの間で不公平感は出ないか、二次相続まで見て無理のない形か。こうした点を早めに整理しておくことで、相続税の負担が変わるだけでなく、手続きや家族関係もずいぶん違ってきます。
相続は、税金だけの問題でも、気持ちだけの問題でもありません。
だからこそ、税金・生活・家族関係の三つを一緒に見ながら、分け方を考えることが、もっとも現実的で効果の大きい第一歩になります。

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