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「派遣僧侶」という働き方をご存じですか。

 

「派遣僧侶」という働き方をご存じですか。

 

 お葬式や法事のときに来てくださるお坊さんについて、

 多くの人は「そのお寺の住職さんなのだろう」と思っているかもしれません。

 もちろん、そうした場合もたくさんあります。

 ただ、実際にはそれだけではなく、葬儀会社や紹介会社を通じて現場に来る、いわゆる「派遣僧侶」と呼ばれる働き方もあります。

 あまり表に出る話ではありませんが、今の葬儀やお寺の現実を考えるうえで、知っておいてよいテーマの一つだと思います。

 

 派遣僧侶とはどんなものか

 派遣僧侶とは、簡単にいえば、葬儀や法事の現場に紹介されて行く僧侶のことです。

 葬儀サービス会社や僧侶派遣会社などから依頼を受けて、会場へ行き、読経をし、導師を務める。

 そして後日、受け取ったお布施の中から、紹介元に手数料を支払う。

 だいたいそのような仕組みです。

 一般の方からすると、少し意外に感じるかもしれません。

 けれども、今の時代、このような形で仕事をしている僧侶もいるのが現実です。

 

 なぜそんな働き方が生まれたのか

 背景には、お寺を取り巻く環境の変化があります。

 昔は、地域とお寺の結びつきが今よりずっと強く、檀家制度の中で寺院が支えられていました。

 どの家も、自分の家がどのお寺とつながっているか、どの宗派かを自然に意識していた時代です。

 ところが、時代が変わり、都市化や核家族化が進みました。

 実家を離れて暮らす人が増え、地域とのつながりも薄くなり、檀家という仕組みそのものが以前ほど強く働かなくなっています。

 その結果、お寺の経済基盤も変わり、すべての僧侶が寺だけで暮らしていけるわけではなくなりました。

 そうした中で、葬儀や法事の紹介を受けて働く「派遣僧侶」という形が広がっていったのだと思われます。

 

 お坊さんの数は多くても、みんなが安定しているわけではない

 外から見ると、お寺やお坊さんは昔からある存在で、何となく安定しているように見えるかもしれません。

 しかし実際には、日本には寺院も僧侶も多く、そのすべてが十分な支えを持っているわけではありません。

 地方では檀家の高齢化や減少、都市部では地域とのつながりの薄れ。

 そうした変化の中で、寺院運営そのものが厳しくなっているところも少なくないのでしょう。

 「僧侶=みな余裕がある」という見方では、今の実情はなかなか見えてきません。

 

 葬儀の僧侶が、必ずしも菩提寺の住職とは限らない

 お葬式のとき、遺族としては目の前のことに精一杯です。

 そのため、来てくださった僧侶が、どのような経路で手配されたのかまで意識しないことが多いでしょう。

 けれども、葬儀の形が多様化した今は、菩提寺とのつながりで来る僧侶だけでなく、紹介会社を通じて来る僧侶もいるわけです。

 このこと自体が直ちに悪いという話ではありません。

 ただ、利用する側がその仕組みを知らないままだと、あとで違和感を持つこともあるかもしれません。

 

 見えにくいのは「お布施」の流れ

 派遣僧侶の話で、とくに驚かれることが多いのが、お布施の扱いです。

 多くの方は、お布施はそのまま僧侶本人に渡るものと思っているでしょう。

 ところが、紹介会社が間に入る場合、その一部、あるいはかなり大きな割合が紹介手数料として差し引かれることがあるようです。

 この点は、一般の人にはとても見えにくいところです。

 遺族にとっては「僧侶にお渡ししたお布施」であっても、その全部が僧侶本人の手元に残るとは限らない。

 ここに、今の葬儀の複雑さがあります。

 

 宗教の世界にも「サービス化」の波が来ている

 派遣僧侶という存在は、宗教の世界にもサービス化や仲介ビジネスの波が来ていることを感じさせます。

 明朗会計、セットプラン、手配サービス、紹介システム。

 こうした言葉は、今の葬儀業界では珍しくありません。

 利用する側にとっては分かりやすく、便利な面もあります。

 その一方で、本来は信仰や供養の場であったはずのものが、少しずつ「商品」や「サービス」として整理されていく面もあります。

 派遣僧侶の問題は、そのことを象徴しているようにも見えます。

 

 僧侶個人の問題ではなく、時代の変化として見ることも大切

こうした話を聞くと、つい

「それはおかしいのでは」

「僧侶なのにそんな働き方をするのか」

 と思う方もいるかもしれません。

 けれども、これは単純に僧侶個人だけの問題ではないでしょう。

 お寺と地域の関係が変わり、葬儀のかたちが変わり、人々の宗教観も変わる中で、そうした働き方が必要とされるようになった、という面もあるはずです。

 つまり、派遣僧侶の問題は、ある特定の人を責めれば済む話ではなく、

現代の寺院、葬儀、地域社会のあり方そのものを映しているとも言えるのではないでしょうか。

 

 利用する側も、少しだけ仕組みを知っておきたい

 お葬式は突然やってくることが多く、細かいことまで確認する余裕がないのが普通です。

 それでも、少しだけ意識しておくとよいことがあります。

たとえば、

  • 僧侶はどのように手配されるのか
  • 菩提寺との関係はどうなっているのか
  • お布施の考え方はどう説明されるのか
  • 戒名や法要の進め方はどのように決まるのか

 このあたりを知っておくだけでも、納得感はかなり変わります。

大切なのは、形式だけで流されず、

 「これはどういう仕組みなのだろう」

と一度立ち止まってみることかもしれません。

 

 これからの寺と葬儀のあり方を考える材料として

 派遣僧侶という言葉には、どこか違和感があるかもしれません。

でも、その違和感こそが、今の社会と宗教の距離感を表しているようにも思えます。

 お寺はこれからどう支えられていくのか。

 僧侶はどのように生きていくのか。

 葬儀は、供養としての意味をどのように保っていくのか。

 派遣僧侶の存在は、そうしたことを考えるきっかけになるテーマです。

 少し不思議で、少し切実で、そして今の時代らしい話として、知っておいて損はないのではないでしょうか。