【今のうちに安く渡す戦略】
自社株を低額譲渡して後継者へ移す節税の裏と表
「うちの株価、これからもっと上がる気がする…」
―そんなときこそ考えておきたいのが、低額譲渡による株式承継です。
つまり、今のうちに株を後継者へ安く譲っておくことで、将来株価が上がっても税金負担を抑えられるという考え方です。
ただし、ここには贈与税という大きな落とし穴もあります。
節税効果とリスク、両方を正しく理解しておきましょう。
☆ 低額譲渡とは?
低額譲渡とは、時価よりも安い価格で株式を売ることをいいます。
たとえば、
自社株の時価:1株=10万円
譲渡価格:1株=3万円
差額:7万円
この7万円分は、実質的に「贈与」とみなされる可能性があります。
つまり、形式上は売買契約でも、税務上は「贈与+売買の複合取引」と判断されるのです。
☆ どんなときに効果的か?
低額譲渡が有効に働くのは、次のような状況です。
l 現在の株価がまだ低いが、将来的に上昇が見込まれる → 成長前の株を移すことで、後継者が増加分を非課税で享受。
l 相続発生前に株式を移しておきたい → 将来の相続財産を減らし、相続税を軽減。
l 後継者が経営に参加しており、支払能力がある → 実際に売買の実質を持たせやすい。
特に、業績好調で株価上昇が見込まれる企業では、「早めの譲渡=将来の節税」に直結します。
☆ 注意:
安く売りすぎると贈与税課税
一方で、譲渡価格が時価の50%以下になると、税務署は「著しく低額」と判断し、差額部分に贈与税を課すことがあります。
つまり、あまりに安い値段で譲ると、節税どころか課税対象になる。
これを避けるには、適正な株価評価書を用意しておくことが不可欠です。
税理士など専門家に依頼して「時価算定根拠」を明確に示せば、後から「恣意的な贈与」と見なされるリスクを大幅に減らせます。
☆ 実務でよく使われる2つのアプローチ
l 一部譲渡+段階移転方式 → 毎年少しずつ株を売却(または贈与)し、平均評価額を下げる。
l 後継者への役員報酬+譲渡資金形成 → 給与で資金を貯めてもらい、実際に対価を支払う実質売買とする。
どちらも贈与扱いされにくくするための工夫です。
形式よりも実態(資金移動の有無・経営参加の実績)が重視されます。
☆ 節税効果のシミュレーション
仮に現時点の株価が1株10万円、将来20万円になると想定。
今のうちに後継者へ1株あたり3万円で譲渡すれば、将来の株価上昇分17万円は、後継者の含み益となります。
この部分には相続税も贈与税も課されません。
つまり、上昇分を無税で移転できたことになるのです。 これが低額譲渡の最大の魅力です。
☆ まとめ
低額譲渡は、タイミングと価格設定次第で劇的な節税が可能な一方、安すぎるとすぐに税務署に否認される諸刃の剣。
成功のカギは、
l 専門家による適正評価の取得
l 実際の金銭授受の裏付け
l 譲渡の目的・合理性の説明
をきちんと整えること。
「今のうちに、将来の価値を渡す」―それが、次世代に無理なくバトンをつなぐための最もシンプルな戦略です。

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