【法人の貸し出しスキームに要注意】
会社資産を社長が使うと株価は下がる?その裏とリスク
「会社名義の車や不動産を、社長が私的に使ってもいいの?」
―中小企業では、こうしたケースが珍しくありません。
しかし実は、これも株価を下げるためのスキームとして、一部の節税指南で紹介されることがあります。
つまり、法人が持つ資産を経営者個人に貸与または利用させることで、会社の利益を減らし、純資産を下げ、自社株の評価を引き下げるという考え方です。
一見、理にかなっていそうですが、やり方を誤ると租税回避行為・否認リスクが発生します。
☆ スキームの基本構造
この方法の基本的な考え方はこうです。
l 法人が不動産や車などの資産を所有している。
l 社長個人がその資産を使用(自宅利用・役員社宅など)。
l 法人は使用料を受け取るが、市場価格より安い。
l 結果として、会社の利益が減少し、純資産が圧縮。
税務上の株価評価は「資産-負債=純資産」なので、純資産が下がれば、当然ながら自社株の評価額も下がるという構図です。
☆ 実際に行われるケース
l 法人所有の建物を「社長の自宅」として利用
l 会社名義の車を家族が私用で使用
l 会社の別荘や保養施設を経営者一族が専用利用
l 不動産を低額賃貸で社長個人へ貸し出し
こうしたケースでは、見た目上「会社の経費が増え、利益が減る」ため、一時的に株価を下げる効果があるように見えます。
しかし、税務署はこの点を非常に慎重に見ています。
☆ 税務上のリスク:否認・認定課税の可能性
問題は、実勢価格との乖離にあります。
法人資産を市場相場よりも低い価格で貸与している場合、その差額は「社長への経済的利益」とみなされ、 次のような課税が発生します。
l 法人側 → 対価不足分を寄附金認定(損金不算入)
l 社長個人 → 給与所得として課税
さらに、こうした状況が続けば「会社の私物化」とみなされ、重加算税の対象になることもあります。
節税のつもりが、二重課税+罰則リスクという最悪の結果に…。
☆ 合法的に株価を下げる運用方法
もちろん、「会社資産を経営者が使う=全てNG」ではありません。
次のように合理的な根拠と契約関係を整えることで、合法的に運用することが可能です。
l 賃貸借契約書を作成 → 市場相場に基づく賃料・期間・修繕義務を明記。
l 第三者評価を取得 → 不動産鑑定や賃料相場調査を添付して根拠を示す。
l 会社・個人双方の帳簿処理を整合させる → 法人:賃貸収入計上、個人:賃料支払いを経費扱い。
l 役員社宅制度として導入 → 福利厚生の一環として制度化すれば、税務リスクが大幅に減少。
つまり、私的利用ではなく制度としての利用に変えることが鍵です。
☆ 節税効果と限界
このスキームの効果は、あくまで一時的な株価抑制にとどまります。
純資産を圧縮しても、相続や事業承継の時点で評価基準が変われば、再び株価が上昇する可能性もあります。
また、会社と個人の線引きを曖昧にすると、金融機関の信用調査や補助金申請時に不利になる場合もあります。
節税よりも会社の信頼性を守ることを優先すべき局面も多いのです。
☆ まとめ
法人資産を個人利用して株価を下げるスキームは、短期的には節税効果が見込めても、長期的には税務否認・信用低下・資産管理リスクを招きかねません。
安全に使うなら、
l 契約書・相場根拠を明確に
l 役員社宅・福利厚生制度として設計
l 税務署にも説明できる透明性を保つ
これらを前提に、「見せ方」ではなく「実質」で整えることが重要です。
節税は数字の操作ではなく、信頼の設計。
その意識こそが、オーナー経営者の資産を守る最良の防御策です。

コメントをお書きください