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売って継ぐという選択 M&Aを活用した事業承継と税制特例の上手な使い方

【売って継ぐという選択】

  M&Aを活用した事業承継と税制特例の上手な使い方

 
 「子どもが継がない。けれど、会社は残したい。」

  ―そんな悩みを抱える経営者にとって、M&Aによる事業承継は今や現実的な第三の選択肢です。

 単なる会社の「売却」ではなく、後継者問題を解決しつつ、税負担を軽減できる仕組み。 
 実はこのM&Aにも、特例的な税制優遇が用意されています。

 今回は、節税と経営継続を両立させる「M&A承継」の活用法を解説します。

 

☆ M&A承継とは?

 M&Aによる事業承継とは、自社の株式や事業を、外部の企業や個人に譲渡して経営をバトンタッチする方法です。

 形式としては次の2種類があります。

l 株式譲渡型: 自社株を買い手に譲渡し、経営権を移転。

l 事業譲渡型: 特定の事業資産だけを譲渡し、法人は存続。

 いずれも、会社を存続させながら経営を継続できる点が特徴です。

 近年では「親族外承継」「MBO(経営陣による買収)」が急増しています。

 

☆ 税制特例が使えるケース

 事業承継時にM&Aを行う場合、一定の条件を満たせば譲渡所得税の軽減や納税猶予が適用されることがあります。

 代表的なのは次の2つです。

l 事業承継税制(特例制度) → オーナー株を後継者(親族
社員)に譲渡する際、  相続税
贈与税の納税を猶予免除できる。

l 経営資源集約化税制(中小企業庁令和5年度改正) → M&Aによる事業承継時、譲渡側の譲渡所得税を最大80%控除できる特例。

 つまり、売却しても税金がほとんどかからない可能性があるのです。

 

☆ M&Aで株価をコントロールできる?

 オーナーが持つ非上場株の譲渡価格は、原則として時価(相続税評価額)が基準になります。

 ところが、M&Aで第三者に譲渡する場合、「市場で成立した取引価格」が時価とみなされるため、自社株の評価を市場ベースで適正化することができます。

 結果として、

l 高すぎる税務評価を是正できる

l 後継者が過大な相続税を負担しなくて済むといった副次的な効果も期待できます。

 

☆ 実際の成功パターン

 ある地方の製造業では、後継者不在のまま社長が70歳を超え、最終的に地元の同業他社へ株式を譲渡。

 
 譲渡益には「経営資源集約化税制」を適用し、所得税負担を通常の5分の1以下に抑えました。

 同時に、従業員の雇用も維持され、「売って終わり」ではなく「残してつなぐ」承継を実現。

 このように、M&Aは節税と社会的責任の両立を可能にします。

 

☆ 注意点:

 税務と契約の整合性

 M&Aを成功させるには、税制の適用だけでなく、契約書の設計が極めて重要です。

l 譲渡契約書に「対価条件承継範囲」を明記

l 税理士による譲渡益の算定

l 行政書士弁護士による法的整合性チェック

 これらを怠ると、税務上「事業譲渡ではなく資産譲渡」と判断され、特例が使えなくなるケースもあります。

 

☆ まとめ

 M&Aによる事業承継は、

l 後継者不在でも会社を存続させる

l 譲渡益課税を軽減猶予できる

l 株価を市場価格ベースで調整できる

 という、極めて実践的な承継手段です。

 
 「会社を売る」ことは、決して終わりではありません。

 むしろ、次の世代につなぐ別の形としての承継です。

 節税は目的ではなく結果。

 M&Aは、会社を生かし、社員と地域を守るための戦略的なバトンタッチなのです。