【貸して節税の落とし穴】
関連会社への過大貸付で株価を下げるスキームと、その否認リスク
「グループ会社にお金を貸しておけば、純資産が減って株価が下がる」
―そんな金融スキーム型節税を耳にしたことはありませんか?
確かに、一見すると理にかなっています。
貸付金は資産として計上されても、貸したお金が戻らないリスクを考慮すれば評価が下がる。
つまり、自社株の税務評価を引き下げる効果がある―ように見えるのです。
しかし、やりすぎは禁物。
税務上は「過大貸付」と判断され、株価評価の否認や寄附金認定、追徴課税につながることがあります。
☆ スキームの概要:
なぜ株価が下がるのか?
非上場会社の株価は「純資産価額方式」で算出されます。
貸付金があっても、その回収が困難であれば、資産評価額を減額(債権控除)できるというルールがあります。
この仕組みを利用して、
l 関連会社(子会社・親族会社など)へ多額の貸付を行う
l 貸付金が回収不能に近い状態を装う
l 評価時点で貸倒引当を計上し、純資産を圧縮
こうして形式的に株価を下げるというスキームです。
☆ 税務署が問題視する過大貸付とは?
貸付が本来の事業目的に沿っていれば問題ありません。
たとえば、グループ間での資金繰り支援や運転資金貸付など。
しかし、以下のような場合には過大貸付と見なされます。
l 返済能力が明らかにない関連会社への貸付
l 貸付契約書がなく、利息設定もない
l 貸付額が会社の資本金・利益を大幅に上回る
l 実質的に返済する意思も見込みもない
これらは「実態のない貸付=出資または寄附」と判断され、貸付金の評価減どころか、損金不算入として課税されます。
☆ よくある否認の実例
l 親会社が子会社に1億円を貸付、5年間返済なし。 → 税務署:「実質的な資本注入。寄附金認定」
l 社長が息子の会社へ無利息貸付、契約書なし。 → 「取引条件が不明瞭」「関連当事者間での恣意的取引」として否認。
結果、貸付金の評価控除は認められず、逆に株価評価が上がるという皮肉な結果に。
☆ 合法的に貸付控除を使うには
節税目的でなく、実務上の合理性を示すことがポイントです。
l 貸付契約書を必ず作成 → 金額・返済期限・利率・担保・目的を明記。
l 返済スケジュールを履行 → 一部でも返済実績があれば「実態あり」と判断されやすい。
l 利息を市場水準で設定 → 無利息や低利貸付は、寄附金扱いのリスク。
l 債権評価を第三者に依頼 → 会計士・税理士による「回収見込み評価書」を添付すれば信頼性UP。
これらを整えれば、貸付控除も合法的な評価減手段として認められます。
☆ 節税と資金流出の境界線
注意したいのは、過大貸付を続けると、会社の資金繰り自体が悪化する点です。
「節税したつもりが、資金が戻らず倒産寸前」―
実際にこうしたケースも少なくありません。
特に親族会社間の貸付は、感情的な甘さが命取りになります。
☆ まとめ
関連会社への貸付は、使い方次第で
l 株価評価の調整
l グループ資金の流動化
l 経営安定化
に役立つ有効な手段です。
しかし、節税目的の過大貸付は一線を越えれば即アウト。
契約・実態・返済の3点セットが揃って初めて、税務上も「正当な経営判断」として認められます。
貸して減らすより、活かして守る。
それが、これからのオーナー企業に求められる賢い資金運用のあり方です。

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