相続税の物納・延納(資金繰り対策としての最後の切り札)
1. 「相続税は現金で払えないとダメ?」
l 相続が発生すると、多くのご家庭で最初にぶつかるのがこの悩みです。
「不動産はあるけど、現金がない」「遺産の大半が土地と建物。税金をどう払えば…」
相続税は原則として現金一括払い。
しかし、財産が不動産中心だと現金が足りず、納税のために土地を急いで売る(=火急売り)という事態も少なくありません。
そんなときに役立つのが、延納(分割払い)と物納(土地など現物で納める)という2つの制度です。
どちらも「相続税の資金繰りを助けるための救済策」と言えます。
2. 延納(えんのう)とは?
延納とは、相続税を分割で支払う制度です。
一括で支払うのが難しい場合、一定の条件を満たせば最長20年にわたって分割払いができます。
条件は次の通りです。
l 納税額が10万円を超えること
l 金銭での一括納付が困難であること
l 担保の提供(原則として不動産など)
l 延納申請書を相続税申告期限(10か月以内)までに提出
分割回数は、相続財産の種類によって変わります。
l 不動産などの物的資産中心:最長20年
l 現金・有価証券など:最長5年
延納利子税(いわば分割手数料)は年0.9〜6.6%程度(令和5年度基準)。
ただし、通常の借入よりは低金利で、「家を残したまま納税できる」のが大きなメリットです。
3. 物納(ぶつのう)とは?
それでも現金も担保も用意できない場合、最終手段となるのが物納です。
つまり、相続した土地や建物、株式などをそのまま税として納める方法です。
物納が認められるのは、
l 延納でも納税が困難な場合
l 対象財産が「物納適格財産」であること
です。
対象財産には順位があります。
1️⃣ 不動産(宅地・建物)
2️⃣ 国債・株式などの有価証券
3️⃣ 貴金属、動産
ただし、どんな土地でも受け取ってもらえるわけではありません。
国が管理しやすく、換価しやすい物件であることが条件です。
たとえば「共有名義の土地」「境界未確定」「貸家付き」などは原則NGです。
4. 延納・物納の申請の流れ
延納や物納を希望する場合、次の手順で進めます。
1️⃣ 相続税申告書を作成
2️⃣ 納付困難の理由書・資産状況明細書を添付
3️⃣ 延納・物納申請書を提出(申告期限内)
4️⃣ 税務署が審査(約1〜2か月)
5️⃣ 延納許可通知 or 物納許可通知
申請後、税務署から詳細な財産評価や担保提供の確認が行われます。
申請が遅れた場合、原則として認められないため「期限内の申請」が絶対条件です。
5. 実務の注意点
l 延納利子税の負担を見越して長期の資金計画を立てる
l 不動産を担保に入れる場合は登記・評価の整備が必須
l 物納する土地は境界・測量・登記簿の整理をしておく
l 相続発生前から「納税資金シミュレーション」を行う
また、「延納→物納」という二段構えも可能です。
最初に延納申請をしても、支払いが難しくなった場合に物納へ切り替えることも認められています。
6. まとめ
相続税の支払いで家族が困らないためには、「現金が足りない前提で計画する」ことが大切です。
・延納=分割払い(最長20年)
・物納=現物納付(最終手段)
・申請期限は「相続開始後10か月以内」
この3つを理解しておくだけで、焦って不動産を安売りするリスクを防げます。
相続税は払える人が得をするのではなく、準備した人が得をする税金です。
今から少しずつ、納税資金のシミュレーションを始めておきましょう。

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