賃貸不動産での評価減(貸家建付地・借家権割合)を活かす
1. 「貸しているだけで税金が下がる?」
相続税対策でよく聞く言葉に「アパート経営で節税になる」というものがあります。
なぜ不動産を貸すことで節税につながるのか
ーそのカギは、評価額の減少(評価減)にあります。
相続税の評価は、実際の市場価格(実勢価格)ではなく、相続税評価額で計算されます。
賃貸物件は「自由に使えない=資産価値が低い」とみなされるため、評価額が下がるのです。
つまり、同じ1億円の土地でも、貸家が建っていれば7,000万円程度に評価が下がることもあります。
この評価差こそが、合法的な節税効果を生み出すポイントです。
2. 「貸家建付地」とは
貸家が建っている土地のことを、税法上「貸家建付地(かしやたてつけち)」といいます。
この土地の評価額は、次の計算式で求められます。
l 貸家建付地評価額= 自用地評価額 ×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
具体的には、
借地権割合:60%
借家権割合:30%
賃貸割合:100%
の場合、1 − 0.6×0.3×1=0.82→ 自用地評価額の82%が評価額となります。
つまり、単純に18%の評価減です。
借地権割合の高い都市部ほど、この節税効果は大きくなります。
3. 建物にも「貸家評価減」がある
l 土地だけでなく、建物にも「貸家であることによる評価減」が適用されます。
建物評価額は、固定資産税評価額の70%程度が目安。
さらに、借家人の権利(=借家権)があるため、「建物評価額 ×(1-借家権割合30%)」
で計算されます。
つまり、建物も実質7割評価になるわけです。
このように、土地・建物ともに評価額が下がるため、全体の相続税額が大幅に軽減される
のです。
4. 実際の効果:数字で見る節税例
たとえば、山形市中心部にある土地(評価額5,000万円)に、アパートを建てて全戸賃貸していたとします。
借地権割合:60%
借家権割合:30%
貸家建付地割合:100%
計算すると、5,000万円 ×(1-0.6×0.3)= 4,100万円
土地だけで900万円の評価減です。
さらに建物(評価額2,000万円)も70%評価になるため、→ 2,000万円 × 0.7 = 1,400万円
合計で1,500万円超の評価減。
相続税率が20%なら、約300万円の節税効果という計算になります。
5. 注意点:「節税目的だけの賃貸」は危険
ただし、税務署もこの制度を熟知しています。
近年は「節税目的のアパート建設」へのチェックが非常に厳しくなっています。
l 実際に入居実績がない
l 建設直後に相続発生
l 賃料が相場とかけ離れている
こうした場合、実質的に貸していないと判断され、評価減が否認されることもあります。
また、空室が多い・
借り手がいない場合も、賃貸割合が低下し、減額効果が下がります。
「建てれば節税になる」という単純な話ではありません。
6. 長期視点での資産防衛として
賃貸不動産の評価減は、節税+資産運用+相続円滑化の3つを兼ね備えた戦略です。
しかし、成功するには次のような準備が必要です。
✅ 地域需要を踏まえた建物計画(空室リスク対策)
✅ 賃料設定と契約実績の確保
✅ 登記・契約書・収支管理の整備
✅ 相続人が管理を引き継げる体制づくり
これらを整えて初めて、税務署にも家族にも納得される本物の節税になります。
7. まとめ
賃貸不動産による節税は、
l 評価額が下がることで相続税を軽減
l 家族の資産を守りながら収益を生む
ただし、実態のない節税目的はリスク
「節税」と「経営」は紙一重。 家族が続けられる賃貸経営こそが、真の相続対策。
見せかけではなく、実際に地域と家族の生活に根ざした活用が、税務にも強い「賃貸不動産節税」の鉄則です。

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