家族の生命保険が分からないときに役立つ「生命保険契約照会制度」
家族が亡くなった後、遺品を整理していると、次のような問題が起こることがあります。
- 「生命保険に入っていたようだが、保険証券が見つからない」
- 「通帳に保険料らしい引落しがあるが、どこの保険会社か分からない」
- 「本人が認知症になり、契約内容を確認できなくなった」
このような場合に利用できるのが、一般社団法人生命保険協会の生命保険契約照会制度です。
一般には「契約紹介制度」と呼ばれることもありますが、正式名称は「生命保険契約照会制度」です。
生命保険契約照会制度の趣旨
生命保険は、家族が亡くなったからといって、自動的に保険金が支払われるわけではありません。
原則として、保険金受取人などの権利者が保険会社へ連絡し、必要書類を提出して請求する必要があります。
ところが、本人が契約内容を家族に伝えないまま亡くなった場合や、認知症などにより判断能力が低下した場合には、家族が生命保険契約の存在自体を把握できないことがあります。
そこで、生命保険協会が窓口となり、協会の会員である生命保険会社に対して、対象者が保険契約者または被保険者となっている契約の有無をまとめて確認する制度が設けられました。
平時利用では、親族等が死亡した場合のほか、医師の診断により認知判断能力が低下した場合も対象になります。
この制度の大きな目的は、「加入している保険会社が分からないため、保険金を請求できない」という問題を防ぐことにあります。
相続財産の調査という側面だけでなく、残された家族の生活保障を確保するためにも重要な制度です。
この制度で何が分かるのか
照会対象となるのは、生命保険協会の会員会社が取り扱う個人保険契約です。
対象者が亡くなっている場合は、照会受付日現在だけでなく、死亡日まで最低3年間さかのぼって、有効に継続していた契約が調査されます。
ただし、この制度によって分かるのは、基本的に次のような入口の情報です。
- 生命保険契約が存在するか
- どの生命保険会社に契約があるか
- 一定の場合に、照会者が死亡保険金受取人になっているか
保険金額、保障内容、契約者貸付の有無、具体的な受取人など、契約の詳細まで生命保険協会が回答してくれるわけではありません。
契約が見つかった後は、各生命保険会社へ連絡し、契約内容の確認や保険金・給付金の請求手続きを行います。
すべての契約が見つかるわけではない
生命保険契約照会制度は便利ですが、過去に存在したすべての契約を調べられる制度ではありません。
例えば、次のような契約は原則として対象外です。
- すでに解約された契約
- 保険料未払いなどで失効した契約
- 死亡保険金が支払済みの契約
- 財形保険・財形年金保険
- すでに支払いが始まっている年金保険
- 保険金等が据え置かれている契約
また、生命保険協会の会員会社以外の契約は調査対象になりません。
照会結果に契約が記載されていなかったとしても、「過去を含めて生命保険契約が一切なかった」と断定できるわけではない点に注意が必要です。
申請前に自宅で確認するもの
生命保険協会も、いきなり制度を利用するのではなく、まず家族で契約の手掛かりを探すよう案内しています。
具体的には、次のものを確認します。
- 生命保険証券
- 保険会社から届いた契約内容のお知らせ
- 生命保険料控除証明書
- 年末調整や確定申告の控え
- 預金通帳の保険料引落し履歴
- クレジットカードの利用明細
- 保険代理店や担当者の名刺
- スマートフォンやパソコンのメール
通帳に保険会社名が記載されている場合など、契約先を特定できるときは、その保険会社へ直接問い合わせた方が早く、照会費用もかかりません。
それでも契約先が分からない場合に、生命保険契約照会制度を利用するのが合理的です。
利用方法と費用
平時利用の申請方法には、WEB申請と書面申請があります。
2026年4月1日以降の新規申請については、照会対象者1人につき、次の利用料がかかります。
申請方法 利用料
WEB申請 6,000円
書面申請 7,000円
WEB申請では、必要書類をスマートフォンなどで撮影して提出でき、利用料をクレジットカードで支払えます。
回答もWEB上で確認でき、書面申請より早く確認できるため、原則としてWEB申請が便利です。
申請内容が生命保険会社へ通知され、調査が開始された後は、原則として内容を訂正できません。
氏名の漢字、生年月日、過去の住所などを間違えると、改めて新規申請と利用料が必要になることがあるため、入力前の確認が重要です。
「死亡した人の契約を相続人が調べる場合」
死亡した人について法定相続人が申請する場合、主に次の書類を準備します。
- 申請者の本人確認書類
- 法務局の認証を受けた法定相続情報一覧図
- 制度所定の申請情報
本人確認書類には、運転免許証、マイナンバーカード、住民票、印鑑登録証明書などが利用できます。
相続関係書類の不足や不備があると、再提出となり、回答まで時間がかかります。
そのため、戸籍一式をその都度提出するより、法定相続情報一覧図を取得しておくと、その後の預貯金、不動産、証券などの相続手続にも利用しやすくなります。
行政書士へ手続きを依頼できる
法定相続人本人が申請するほか、弁護士、司法書士または行政書士を任意代理人として手続きを依頼することもできます。
行政書士が代理する場合には、資格を証する書類、法定相続情報一覧図、生命保険協会所定の「生命保険契約照会依頼委任状兼同意書」などが必要です。
指定様式以外の委任状では受け付けられないため注意が必要です。
相続手続では、生命保険の調査だけでなく、戸籍収集、相続人の確定、預貯金や不動産の調査、財産目録の作成、遺産分割協議書の作成などが同時に進みます。
相続人が県外に住んでいる場合、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合、古い戸籍が多数必要になる場合には、専門家へ依頼することで手続の負担を軽減できます。
災害時には無料で利用できる
災害救助法が適用された地域で家族が死亡または行方不明となり、家屋の流失や焼失などによって保険証券を失った場合には、災害時利用の対象となることがあります。
災害時利用の照会料は無料です。
ただし、災害救助法が適用された地域であることや、災害により生命保険の請求が困難になっていることなど、一定の要件があります。
契約が見つかった後が重要
照会結果に生命保険会社名が記載されていても、それだけで保険金が自動的に支払われるわけではありません。
該当する保険会社へ連絡し、死亡診断書、戸籍、受取人の本人確認書類、保険会社所定の請求書などを提出する必要があります。
また、被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は、一定の場合に相続税の課税対象となります。
受取人が相続人である場合には、原則として次の非課税限度額があります。
500万円×法定相続人の数
ただし、相続人以外が受け取った保険金には、この非課税制度は適用されません。契約者、被保険者、保険料負担者、受取人の組合せによって課税関係が変わるため、契約が見つかった場合は税務上の確認も必要です。
まとめ
生命保険契約照会制度は、亡くなった家族や認知判断能力が低下した家族について、加入している生命保険会社が分からない場合に利用できる一括照会の仕組みです。
ただし、契約内容や保険金額まで一括して判明する制度ではなく、契約が見つかった後には、各生命保険会社への確認と請求手続が必要です。
まずは保険証券、郵便物、通帳、控除証明書などを探す。
それでも契約先が分からないときに照会制度を利用する。
この順序で進めることが、費用と時間を抑えながら、生命保険金の請求漏れを防ぐための現実的な方法です。

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